ボタ山に月が出た—昭和遺産の町・田川とその周辺を訪ねる—

~来てみらんばい、筑豊のど真ん中へ~

田川市 居住体験

スペシャリティ・コーヒーが楽しめる憩いスポット

カテゴリ:交流 更新日:2015.12.10

田川市の人口は現在4万7800人。最盛期の半分を割っている。
かつての炭坑を挟んだ主要駅、田川伊田と田川後藤寺のアーケード街は寂れきっており、それを「昭和遺産」と呼ぶのも気の毒なくらいだ。若者をあまり町で見かけないーとは先日も書いた。集う場もそうないのだ。
個人的にはいかにも女子向けな、雰囲気重視のカフェなどにさほど魅力も感じないから、妙にサバサバするが、みんないったいどこでデートするんだろう?ーなどとも思う。
中高時代から相手もいないのにデートコースを練る。それがバブル世代男子の基本。いや、ずっと都会暮らしだと、そんなことばかり考える習性が身に付く。自然散策も悪くはない。が、喫茶店もないのは困るなぁ…(実際、モーニングでも食べようと出かけたら、両駅前ともになかった)。

ないない尽くしで市民のみなさんには申し訳ない。でも、事実だから仕方がない。実際聞けば、若い人たちは隣の市の飯塚まで出かけるという。
が、考えてみたら、ぼくだって地元の西東京でデートはしなかった。吉祥寺か新宿、池袋に出たものだ。でも、元中学の同級生なんかと、何気ない感じで会うとか集まる場はファストフード以外にもあった気がする。そして、どこの町に行っても、実際は立ち寄らずとも、そんな場を見つけてはほくそ笑むのだ。青春プレイバック!
田川滞在も後半にさしかかり、ぼくはようやくそんな場所を見つけた。それが鎮西団地内の小さな商店街にある「バードコーヒー」。手作り感あふれる内装から店主の柔らかな個性がにじみ出ている。

むろん、店内に一歩足を踏み入れれば、かぐわしい珈琲の香りが出迎える。しかも、この店は今、注目を集めている“スペシャリティ・コーヒー”の専門店なのだ。その定義は以下に詳しいが、要は産地が明瞭で有機栽培によって作られた豆をその特性を上手く引き出すよう、丁寧に焙煎し挽いて淹れたコーヒー。
http://www.scaj.org/about/specialty-coffee
ちょうどぼくはその成立を描いた『A Film About Coffee ア・フィルム・アバウト・コーヒー』というドキュメンタリー映画を試写で観たばかり。60分弱の短い尺数で世界のあちこちで本物のコーヒーを求める人間模様が要領よくまとめられ、なによりコーヒーが飲みたくなる作品だった。

店主の福島基さんとは実は先述の「田蔵」での立ち呑み市で出会っており、そんなこだわり抜いたコーヒーが田川で飲めるとはーと素直な感想を漏らした。すると、純朴を絵に描いたような福島さんは、「まずぼくが好きになってしまったんですね」とはにかみながら語った。

「長く老舗の金物商で働いていて、待遇も悪くなかったんですが、ずっと起業を考えていたところ、直方の『このみ珈琲工房』に入り、偶然出会ったのがスペシャリティ・コーヒーでした。正直さほどコーヒー好きでもなかったんですが、扉の前からすごい華やかな香りが漂っていて…一気にのぼせちゃったんです」
直方は通り過ぎただけで訪ねてはいないが、田川以上に寂れていると聞く。そこで孤軍奮闘するこのみ…のマスターは究極のアロマを求め、世界中の産地を飛び回っているのだそうだ。

福島さんは早速、お薦めの“ニカラグア ロット402”というコーヒーを点ててくれる。ぼくは濃くローストしたコーヒーがどちらかといえば好みだったが、カップに注がれた液体は思いがけず淡い色をしている。が、その琥珀色のコーヒーは滑らかでどこか甘いような余韻を残す。ゴクゴクと飲めてしまった。甘露という表現が脳裏に浮かんだ。

こうしたコーヒーを安価に飲めることにもだが、福島さんの温かい人柄が醸す、この空間に立ち所に虜となった。また、「好きを仕事にする」ことの大切さ。それをぼくは福島さんから再確認させてもらった気がする。

バードコーヒーは今年開店から5年目を迎えた。なんとか順調に経営してこれたのも、奥さんの優子さんの内助の功以上の貢献があったからだ。開店当初、幼子を抱えた優子さんは専業主婦。しかし、接客業の経験が抱負だっただめ、カフェの経営に抵抗はなかったという。店のもう一つの看板のマフィンは彼女の手作り。
「どうやったら売れるか、継続していけるか、ずっと不安でした。試行錯誤を繰り返し、オープン前から毎日焼いていました」
その結果、これまで店で出した数も40種。同店はFacebook等のSNSで発信をしているが、そこで毎日、その日出すメニューも確認できる。そして、取り置き願いの電話がよくかかってくるのだとか。

福島さんはこうも話した。
「生意気なようだけど、お客さんを育て、また育ててもらう。商売ってそんなもんかと思うんです。ここでいろんな提案をして、様々なコーヒーを味わってもらい、自分の好みを見つけて、さらに広げてもらう。だからいくつかの地元メディアも取り上げてくれましたが、口コミで評判が広がったーというのが正直なところです」
顧客の開拓と維持。それにはたゆまぬ努力を払い続けねばならない。福島さんは子どもの頃から町のオーケストラの一員でずっとバイオリンを続けてきた音楽好きで、最近はジャズに夢中。バード・コーヒーという店名も天才サックス奏者、チャーリー・パーカーの愛称“Bird”から来ている。立ち呑み市でもジャズ談義に花が咲き、ぼくは今回の訪問を心待ちにしていたのだ。

夫婦で二人三脚。店を持ち、夢を追う。こういう人たちが田川にもいる。とても心強く思うと同時に、この店が自分が実際に住む町にも欲しい!ーとまたないものねだりをしたくなるのだった…。

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