ボタ山に月が出た—昭和遺産の町・田川とその周辺を訪ねる—

田川に来て１週間になる。のっけから多くの意欲的な人々との出会いがあり、早速取材を開始していた。が、出だしの話題は軽めがいい。となると、やはり食だろう。
田川といえば、ホルモン鍋で盛んに全国にアピールしているが、なぜかまだありつけていない。これまで何度かあった歓待の宴席も、新鮮な魚が主体の居酒屋でであった。一人鍋も虚しいものだし、そこは機会を待とう。

ぼくの住まいは田川伊田駅近くで、隣駅の後藤寺までは車で５分ちょっとの距離。だから、昼食はなるべくその界隈で取ることに決めた。早速飛び込んだのが“もやしそば”の幟が翻る「巳城」。なんでも西田川高校の生徒が長年愛したフッコー食堂の味を愛してやまない巳城さん夫妻が、その味を継承して数年前に始めた店だ。
使用する麺も細麺でそこに絶妙に絡むもやしがまたほっそりしている。そこへコマ肉が少々加わるだけのシンプルな代物だが、それぞれの素材の味がくっきり伝わり、薄味の醤油の香りがまた香ばしい。