ほどよい時間の流れを感じる町 広川
市町村情報 福岡
2024.08.14
広川町は福岡県南西部に位置し、福岡市中心から車で約1時間の小さな町。
いちごやぶどう、梨、桃など県下でも有数の生産量を誇るフルーツのほか、
ガーベラや菊などの花き、お茶など多くの農産物が生産されていますが、
国の重要無形文化財に指定されている『久留米絣』の産地でもあります。
自然豊かな地域ですが、町の中心部を国道3号線と九州自動車道が縦断しており、
福岡市内や県外への自動車でのアクセスは良好!
都市部とのアクセスを保ちつつ、のんびりと過ごしたい人にお薦めの町です。
~朝採れの新鮮な野菜やフルーツが並ぶ町民の買い物処「広川くだもの村」~
今回は先ず、2022年9月に竣工した広川町役場の新庁舎にお伺いし、企画課の黒田さんから、
ここ最近の人口動態や広川町の魅力、移住促進に向けた施策などをお聞きしました。
御多分にもれず、少子高齢化の波で町の人口はやや減少傾向にありますが、
アクセスの良さを活かした製造・物流拠点としての企業進出と雇用促進、
いちご農家をはじめとする新規就農希望者への情報発信や住宅取得への支援、
『こどもまんなかプロジェクト』に沿った18歳までの子ども医療費無償化、
町長が小中高校生と直接対話する『こどもまんなか未来トーク』の企画など、
特に子育て世代に向けた住みやすい町づくりの策定に力を注いでいます。
~広川町のお試し居住施設「Orige」と管理者の山本さん~
次に町役場から歩いて20分ほどの『お試し居住施設Orige』を訪ねてみました。
Orige(おりげ)とは、地元の言葉で『おれんち』、つまり『我が家』のこと。
我が家のような気分で広川町の暮らしを体験することをコンセプトにした宿泊施設で、
同時に広川町への移住相談窓口としても機能しています。
管理者である山本さん自身、7年前に地域おこし協力隊として広川町へ移住し、
現在は地域商社ニュー・ヒロカワ代表としてOrigeや交流施設Kibiru(きびる)を管理・運営するほか、
広川町が取り組む地方再生プロジェクトの企画や情報発信を担っています。
広川町に来て良かった点をお尋ねすると、必要以上に時間に追われることがなく、
ゆったりとした流れの中で、家族との時間を大切にしながら、自分のペースで過ごせている、
という明快な答えが返ってきました。
う~ん、素晴らしい!
また、町内企業と連携した『広川ワーキングステイ』事業では、Origeに一定期間滞在しながら、
実際に広川町で仕事と生活を体験する、いわば体験型移住の取組も進めています。
広川町への移住に興味のある方は、是非こちらをご覧下さい。
~大丸福岡天神店で開かれた第2回久留米絣大博覧会~
さて、『絣(かすり)』は日本を代表する伝統的な木綿織物で、名前の「かすり」は、
織られる際に柄がかすれて見えることから名付けられたと言われています。
日本3大絣の一つ、旧久留米藩で生まれて200年以上の歴史を持つ『久留米絣』は、
括り(くくり)染めした経(たて)糸と緯(よこ)糸を合わせて、
複雑な柄の織物として仕上げていくのが特徴で、完成までに30もの工程があり、
熟練の職人さんが1反作り上げるまでに何と2か月以上かかります。
藍染めの原料となる蓼藍(たであい)の産地に近く、良質で大量の水が豊富な広川町には、
現在も絣工房が最も多い13か所あります。その中の坂田織物工房を見学させていただきました。
折しもニューヨークの専門学校でデザインを学ぶイギリス人女性3人がOrigeに宿泊し、
福岡県伝統工芸品発信事業を通じて久留米絣を学ぶプログラムの体験就業中でした。
have a nice day‼
そしてこの工房で総勢10人を超える職人さんの中には、移住者でもある岩山さん(名古屋市から)、
本(もと)さん(福岡市から)が仕事をしておられ、異口同音に絣の素晴らしさと、
お二人が生活する広川町の住みやすさをPRしてくれました。
~坂田織物工房で働く岩山さん(左)、本さん(右)~
ミニ歴史講座 =井上伝(でん)物語=
江戸時代後期の天明8年(1788)、久留米城下の通外町に米屋の娘として生まれた井上伝は、
幼い頃から木綿織りを手習いしていましたが、13 歳の頃に色褪せてまだらになった着物の模様に着目し、
糸を括って藍で染めたものを織り上げて模様を生み出す「久留米絣」を考案しました。
この織物の美しさは城下の評判となり、その後も織り機械や模様作りの技術に改良が重ねられた結果、
慶応2年(1866)には、年間約一万反が久留米藩の外にも販売されて、全国に広く知られる織物となりました。
この日の広川町は最高気温35℃。
真夏の暑気を浴びて息も絶え絶えになったところで、
坂田織物さん直営の SAKATA CAFÉ で、冷た~い『かき氷』をいただきました。
絣は世界中で親しまれてきた織物ですが、この一品は南米グアテマラの絣をイメージして、
氷はなんと絣の糸を再現した糸状のふわふわ&コーヒー味で絶品です!
~SAKATA CAFE の「綿雪」~
というわけで、今回は福岡県南に位置する広川町を訪問しましたが、
町内には『こふんピア広川』や『逆瀬ゴットン館』、『竜光寺公園』など、
大人も子どもも楽しめる憩いの空間がたくさんあります。
空や夕陽、田園風景を眺めながら、ほっと一息。
自然豊かで時の流れがゆるやかなこの町を、是非歩いてみて下さい。