いろいろヤバくて目が離せない町~大任町・後編~
市町村情報 福岡
2020.10.01
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前回に引き続き、福岡県のほぼ中央に位置する大任町のお話です
今回は、大任町のもうひとりの地域おこし協力隊・石田雄輔隊員のストーリーを紹介します
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石田さんの協力隊員としての任務は、
『小さな農業と”+αのなりわい”でのビジネスモデルを作ること』
この涼しげに咲く花オクラは、石田さんの畑でのショットです
オクラとは品種は違いますが、
噛んでいるとほんのりとオクラのような味と粘り気が
サラダやおひたし、天ぷらにして食べるそうです
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美味しそうなカクテル♡
いえいえ、
石田さん(写真左)の畑の”バタフライピー”というお豆の花を乾燥させて煮出したお茶です
口にふくむと、ほんわかとお豆の香りが
このお茶にレモンを絞ると、
青いお茶がムーディな紫色に変化
おしゃれなカクテルが作れそう
真ん中の素敵な女性は、石田さんが「うちの相方」と呼ぶ林三裕紀さん
おふたりで空き家をリノベーションして、
畑を作り、
野菜やハーブを育てられています
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空き家のリノベーションと畑作り
字面だけ見ると、「楽しそう♡」とワクワクしますが、
どちらもかなり大変な作業だったようです
家の中と蔵の荷物は自由に処分していい
リノベーションも好きにしていい
と言われたものの、
広い家の中には婚礼ダンスなどの大物がたくさん
布団は十数組、
書籍や日常品などがそのままどっさり残されていた状態でした
敷地内の畑も、伐った木がそのままに放置され、
その上からゴミがぼんぼん投げ入れられており
それらのゴミを分別し、処理場に運ぶ
ゴミの量が量だけに、トラックで20往復以上にも及んだとか
石田さんちのリノベーションに触発された友人が同じように空き家のリノベーションに挑戦し、
ゴミ処分は業者さんに依頼したところ、200万円以上の請求書がきたとのこと
とても労力のいる大変な作業だ
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2人でペンキを塗ったという住居内は、
黒とグレーでまとめられ、とてもスタイリッシュ
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あちらこちらにオブジェがたくさん
蔵の中にあったものや
友人のアーティストの方々の作品だそうです
このセンスのよさは、半端なくヤバい
石田さんは学校を卒業後ユニクロに勤めていました
その後、服飾専門学校で学び、
三裕紀さんとともにモード系の洋服のショップを
福岡市の百道浜で営んでいました
そんな彼らが、なぜ大任町に?
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石田さんは、もともと自己免疫疾患があり、
痛みなど様々な症状が出るたびに、お医者さんから症状を抑える薬が山ほど出されていました。
自己免疫疾患は日本でも年々増えており、子どもにも多くなっています
決定的な治療法はなく、症状をコントロールするための薬を使うしかありません
そこで、彼は、自分自身でその疾患を治そうという取り組みを始めました
まず、それまで飲んでいた薬をすべてやめる
食生活を見直し、
ファーストフードやコンビニ弁当をやめ、
出来る限り自炊をする
スナック菓子はもちろん、お菓子類も口にしない
そして、日本の食の環境、添加物などの薬品などについて
ひとつひとつていねいに調べ、学び、
カラダにいいものを摂ることを意識しました
その結果、協力隊員になって町の健康診断を受けた時にはオールA評価!
かかりつけの病院からも、「薬の服用の必要なし」というお墨付きをもらえるまでになっていました
日本の食の環境を調べれば調べるほど、その危うさに驚くことに
そんな時に「無肥料栽培家」の岡本よりたか氏のことを知り、
岡本氏の考えを学ぶうちに
「自分の手で、安全で元気な野菜などを育てようという気持ちが強くなってきました」
そんな流れで、彼は大任町で地域おこし協力隊員になられたそうです
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無肥料無農薬で大切に育てられたお野菜たち
無肥料栽培のいいところは、
人にとっても環境にとっても何よりも安全なこと
薬品は何も使わない
落ち葉や雑草などの堆肥と
植物の力、土の力だけで育ったお野菜たち
市場では甘い野菜が人気だが、
トマトは本来すっぱいもの
ゴーヤは苦いもの
余計なものを与えられないで育つと、
そういう野菜本来の元気でやんちゃな味が楽しめるという
頂いたトマトをかじってみると
「あ、トマトってそういえばこんな味だった!」
と懐かしさが込み上げてきた
しっかりどっしりトマトの赤い味が口の中に広がる
そんな、病みつきになるヤバさ
このひと口で、すっかり石田さんちのお野菜のファンになってしまいました
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石田さんたちが、
木を伐り、
雑草を抜き、
畑として生き返らせたこの畑
この場所で、
育てた野菜から種をとって、それをまたここに植えて
大任町の畑で、安全で元気な野菜たちを育てていきたい
そんな野菜のことを広くみんなに伝えていきたい
左奥のミステリーサークルっぽい所は、
夏野菜の収穫が終わり、次はいろいろなハーブを植えていく予定
それらを、
興味をもってくれる人たちに届け、
意見をもらって、
また次の作物に活かしていく
ホームページを作ってネットで販売するのもいいが、
できればひとりひとり顔を合わせて伝え、
食べてもらった人からの感想を聞きながら、よりよいものを作っていく
そんな農業をしていきたいという
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小さな農業と+αのなりわい
今後は、農家民泊もやっていきたいと考えている
二拠点生活という暮らし方がもてはやされてきているが、
実際にはある程度の資力がないと難しい
石田さんが目指しているのは、
平日は都市部で働き、
週末は田舎で自然に触れる
そういう田舎との関わり方、たとえば週末農家なども容易にできるよという仕組みを作ること
「移住となると、大きな決断が必要です。まずは気軽にうちにトライアルステイのような形で滞在し、
農業を体験してもらえれば、と思っています」と石田さん
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石田さんのお話を聞いていると、
この町にいろんな方が訪れ、大切に野菜を育てている姿が目に浮かびます
「ここにはダイヤの原石がたくさんころがっています
何もないから、
まだ誰もやっていないから、
これからいろんな物を生み出していけると思います」
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マイクロキューカンバー
ちっちゃなきゅうり
お土産に頂いたので、ピクルスにしてみました
3日間じーっと待ってから口に入れると、
弾力のある皮の中から、プニュっと涼やかなきゅうりのジュレが
ていねいにていねいに
大切に大切に作られたお野菜のパワー
こんなに爽やかで力のあるピクルスは初体験です
大任町には、空き家も休耕地もたくさんある
今後、空き家バンクを整備して、空き家や畑を有効活用できる体制を作っていこうと
現在、町役場でも力を入れて準備を進めているとのこと
この町から、これからもどんどんヤバいモノたちが生まれて来るのが楽しみです!