移住者インタビュー

LIFE STYLE 築上町

Uターン=田舎に引っ込むという考えはありません。生活の拠点を故郷に置きながら、受け身にならず、新しいことを発信していきたい。

移住者DATA

Uターン

築上町 安部雄一郎さん

Profile
安部雄一郎さん(33歳)
Data
築上町出身。大阪の大学に進学し、卒業後は酒類メーカーに就職。東京と名古屋で約10年間勤務した後、2018年4月にUターンした。現在は、父と共に家業の「奈良漬さろん安部」の経営や商品開発に携わっている。ワインを愛し、ソムリエ、日本ワインマスターの資格を保有する。
Work
漬物メーカー勤務

離れた場所で家業を手伝ううちに、自分がやるべきことはこれだと思いました。

インタビューを受ける安部雄一郎さん

Q. 移住のきっかけを教えてください。

30年ほど前、祖母が作る漬物が近所で評判だったことをきっかけに、父が漬物店「奈良漬さろん安部」を始めました。その家業を絶やしたくなかったというのが、築上町に帰ってきた一番の理由です。しかし、学生の頃は家業を継ぐという考えは全くなく、自分の好きなことをやりたいと思っていました。大学を出て就職したのも、自分が好きなワインと関わることができる酒類メーカー。そこで、日本ワインブランドマネージャーを任され、商品をブランディングすることの楽しさを知りました。その後、仕事が休みの日には実家の商品開発やブランディングも手がけるようになったのですが、それがちょうど30歳頃。そうして家業に少しずつ携わるようになると、気持ちがこちらに傾き出して…。今後の人生や働き方を考えるようになった時期と重なっていたこともあり、同じブランディングをするなら私が受け継ぐべき品に力を注ぐべきではないかと思い、帰郷を決めました。

Q. ご家族の反応はどうでしたか?

帰ってくると決めてから実際に移住するまで、かなり家族と話し合いました。父親は自分の跡を継いでほしいと思っていたようで、喜んでくれました。ところが母はもっと現実的でしたね。安定した企業に勤めているのに、辞めてやっていけるのかと心配していました。確かに会社という大きな傘が無くなることには、私も漠然と不安を感じていました。ただ、そういう危機感を持ちながらも、自分がしっかりしておけば大丈夫だろうと思い、帰ってくるという気持ちは変わりませんでした。

漬物のイメージを変えていきたい。ソムリエの資格を生かした商品も手がけています。

インタビューを受ける安部雄一郎さん

Q. 現在の仕事について教えてください。

実家の「奈良漬さろん安部」で製造、事務、販売、新商品の開発など、業務全般に携わっています。漬物って古いイメージのものだと思うんですが、その印象を変えて、どうすれば皆さんに手に取ってもらえるか、食べてもらえるかということを日々考えています。例えば、"ワインに合う奈良漬"というテーマで「SALON DE AMBRE(サロン・ド・アンブレ)奈良漬✕クリームチーズ」という奈良漬とクリームチーズを融合させた商品を開発し、百貨店の催事に出店するなど積極的に販売を行っています。コンクールで農林水産大臣賞を受賞するなど、おかげさまでとても好評いただいている商品です。

店頭に立つことも多いという安部さん。慣れた手さばきで商品を包装します。
パソコンに向かい、発注やスケジュール管理などの事務作業も行います。

家族との久しぶりの同居。不安もあったけど、お互いに徐々に歩み寄っていい関係になっています。

インタビューを受ける安部雄一郎さん

Q. Uターンするにあたり、不安だったのはどんなことですか?

仕事面は家業を継ぐということが決まっていたので不安はありませんでした。一番気になったのは、地元に友人が少ないということ。中学校から地元ではなく北九州の学校に通っていたのですが、その頃の友人もあちこちに散らばっていて、こちらで会うことが少ないんですよね。地元での交友関係を広げるため、スポーツサークルなどにも参加してみたいのですが、商売をやっていると毎週の定期的な参加が難しかったり…。帰郷して半年ほどですが、まだまだ模索している状況です。また、久しぶりの家族との同居も大丈夫かなという気持ちはありました。最初はこれまでの生活のリズムとの違いがありましたが、お互いに徐々に歩み寄っていい関係になってきたと思います。これまでたまに帰省した時はどこかお客さん気分なところがありましたが、一緒に暮らすとまた家族になったという感じですね。

仕事が忙しいのは変わりませんが、自分の時間が増えてワークライフバランスが向上しました。

インタビューを受ける安部雄一郎さん

Q. 普段の生活はどう変わりましたか?

これまでは忙しく働いていたので、昼ごはんを食べながら仕事やミーティングをしたり、深夜まで残業をすることも多かったですね。今は通勤時間がほぼなく、仕事は18時に終わるのでゆとりがあります。休みは相変わらずあまりないですが、忙しい日々の暮らしの中でも、ゆっくりと食事を取ったり、自分の時間が増えたことで、ワークライフバランスは格段に上がったと思います。

Q. 実際に築上町で暮らしている感想を教えてください。

築上町は一言で言うと…田舎ですよね(笑)。町の中に都会的な要素は少ないですが、そんなに不便さは感じません。北九州空港まで車で40~50分。東京行きの飛行機も多いですよ。高速道路も通ったので北九州にも福岡にも行きやすい。私が地元にいた高校生の頃に比べ、格段に生活しやすくなっていると思います。また、自然が身近にあるので、季節を感じられるのがいいですね。都市部に住んでいると気づかない春の香り、秋の香り。山を歩けば落ち葉の香り。そんな香りを嗅ぐと「あのワインを飲みたいな」と思ったり(笑)。そうやって四季を感じながらリラックスすることで、新しいアイデアが生まれてくるんですよ。

Q. これからどう暮らしていきたいですか?

以前はUターンと言うと、田舎に引っ込むというイメージがあったかと思うのですが、今はそうではないと思います。生活の拠点はここに置くけれど、行こうと思えばどこにでも行けます。できることが狭まるという考えは持たなくてもいいのではないでしょうか。私も受け身の姿勢ではなく、ここからさまざまなことを発信していきたいですね。

物産館などが集まる「メタセの杜」にある、メタセコイアの並木道を散策。
車で5分ほど走れば、広大な海を望める浜の宮海岸に到着。自然と近い暮らしを実感できる場所です。

どこにいても仕事ができる時代。明確なビジョンを持ち、それを実現できる場所で暮らすのが一番ではないでしょうか。

インタビューを受ける安部雄一郎さん

Q. 改めて気づいた福岡県の魅力はありますか?

福岡県は、都会的な場所と田舎的な場所がすごく隣接しているところがいいですね。北九州市や福岡市という100万都市もあれば、山と海が近く、田舎暮らしができる自然もすぐ身近にある。そして食べ物がおいしく、人は優しい。飛行機や鉄道の便利もよく、東京も大阪も、海外もすぐに行くことができる。こんなに好条件が揃っている県はそうそうないのではないでしょうか。すべてがいいバランスで成り立っているのが福岡県だと思います。だから、誰もが住みやすいと言うのでしょうね。以前の職場でも、九州支社への異動希望者は本当に多かったんです。その理由が改めてわかったような気がします。

Q. 移住を考えている人にメッセージをお願いします。

今は、どこにいても仕事ができる時代です。どういう考えをもって何をしたいか、何を発信したいか。また、プライベートはどういうスタイルで過ごしたいか。その明確なビジョンを持ち、計画を立てたうえで住む場所を考えるべきだと思います。結果として、福岡県で暮らすのが最適だと思ったのなら移住を考えてもいいのではないでしょうか。暮らしやすい県だというのは、間違いないと思います。

※当インタビューは、2018年9月28日に行われたものです。

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