- 記事
- 画像
写真家という仕事
カテゴリ:仕事 更新日:2015.11.23
写真がはたす役割とは、記録と伝達。
写真家の役割とは、
物事が起きている現場へ赴き、
そこで起きていることを記録して伝達すること。
人々が見たいものを、代わりに見て写真に記録して伝える。
あるいは、誰かが多くの人に見てもらいたいことを、記録して伝える、この繰り返し。
突出した知識や経験、あるいは恵まれた環境から見えてくるものを伝えるのが職業写真家の仕事、
僕は、言葉にならない物事を画像や映像に置き換えて五感に伝える、翻訳家のような仕事として写真を捉えている。
これを意識してやっている人間は写真家の中でもかなりマイノリティーなのかもしれない。
通常写真家は、プロならではの視点や、何か特別なアングルなど、素人とは違った写真を撮ることに勤しむものだが、
僕は、見る人への伝わり方を特に考えて、誤解のないような写真を撮るように心がけて、仕事をしてきたつもり。
今回の田川では、
特にミッションを与えられなかったこともあり、
初めての町をなるべく普通に、
自分の印象を加えずに撮影して歩いた。
田川の町は不思議な町で、
昼間の商店街にほとんど人影が見られない。
これは、僕らの仕事で、まるで撮影の現場で通行人等が写り込まないように交通を誘導したりして、カメラのアングルの中だけに人工的に無人の町を作り出す作業を終えたばかりの現場のようだ。
この、撮影のセットのような町では、
今までカメラに収められることの無かった、
様々なドラマが演じられてきたのかもしれない。
看板だけがかろうじて残った、朽ち果てかけた飲み屋で暮らす老人。
朝起きて、そっと家から出ると、人通りのないアーケードをくだり、駐車場にたむろする野良猫たちに挨拶をして、たった一人の幼なじみの家にお茶を飲みに行く。
そんなストーリーが頭をよぎる。
あとは役者と撮影監督がいれば、美術部も照明部もいらない。
すぐにでも映画が撮れる。
田川とはそんな素敵な町でもある。