Iターン
- Profile
- 野北佳奈さん(39歳)、智之さん(37歳)
- Data
- 妻・佳奈さんは宮城県仙台市出身。東京で会社員として働いていた時に、同じく東京で働いていた糸島市出身の智之さんと出会い、結婚。夫婦で2014年12月~2015年11月、1年間の世界一周の旅を経験する。2015年12月に糸島市へ移住し、2016年8月、筑前前原駅前にゲストハウス「前原宿(まえばるしゅく) ことのは」をオープン。
- Work
- ゲストハウス経営
Q. 移住のきっかけを教えてください。
佳奈さん:20代の頃からバックパッカーをしていて、各地でさまざまなゲストハウスを利用しました。そこで出会う旅人たちにいろんな話を聞き、「こんな生き方もあるんだ」とたくさん刺激をもらったので、私も人が集まるゲストハウスを開きたいと思っていたんです。また、学生時代は介護について学んでいたのですが、要介護になってからの手助けではなく、その前の健康な身体作りに役立つことがしたいとずっと思っていました。行動するきっかけになったのは、2011年の東日本大震災です。人生を見つめ直す大きな出来事でした。東京で会社員として働いていたのですが、震災をきっかけに「私が本当にやりたかったことは何だったかな」と考えるように。そこで私の心の中にずっとあった「世界のどこかでゲストハウスを開きたい」「健康な身体作りの手助けをしたい」という二つの思いを実現するべく、行動に移すことにしました。
智之さん:二人とも国際交流に興味があり、出会ったのは他言語サークルがきっかけ。その後、国際交流ボランティアに参加するようになり、外国人に日本の観光地を案内したり、クッキング教室のサポートをしたりしていました。私は大学生の時に地域活性の研究をしていたこともあり、ゲストハウスを通して、地域を盛り上げることができるのではないかと思いました。
佳奈さん:東京は、若い頃に住んで、いろいろな人に出会って学びを得る場所としてはとてもいいですよね。でも、一生暮らしていきたいかと考えるとちょっと違うと思いました。自然に囲まれて、自分らしく生きていけるところに住みたい。それを実践したいと思いました。
Q. 移住先に糸島市を選んだきっかけを教えてください。
佳奈さん:2014年12月~2015年11月にかけて、二人で世界一周の旅に出かけました。中米から南米、ヨーロッパ、南アジア、東南アジアと移動し、訪れた場所は23か国93都市。実は、旅の途中で気に入った場所があれば、そこでゲストハウスを開くことも考えていました。でも、世界中のいろいろな場所を見たけれど、ここだと思ったのが夫の故郷である糸島でした。自然が豊かで海も山も近く、すごくいい人ばかり。そして食べ物がおいしい。
智之さん:私も15年くらい東京にいたのですが、ずっと住むわけではないだろうと漠然と考えていました。将来は福岡に…と決めていたわけではないのですが、幸い、妻が糸島を気に入ってくれたので帰ることを決めました。糸島は移住してくる人も多いですし、受け入れやすい土壌ができつつあるのかなと感じています。昔は出ていく人が多い土地だったのですが、時代は変わりましたね。
Q. 移住するにあたって不安はなかったですか。
佳奈さん:不安は特になかったですね。私は割とどんな場所にでも適応するタイプ。だいたいどこの街に行っても、楽しいことを見つけて楽しめるんです。住むとなると考えることもいろいろありましたが、糸島はバランスが取れていていい場所だと思います。そして、夫の家族や親戚が本当に皆さんいい方々で、最初の印象がとてもよかったんです。なので、人間関係も心配はしていませんでした。また、糸島にあるお店を営んでいる方々もこだわりを持っている方が多くて、そういう方々と会話をするのが楽しいんですよね。きっと糸島は、楽しい人が集まる場所なのだと思います。
智之さん:移住者と地元の方々の「いと会」という交流会があったので、溶け込みやすかったというのもあります。最初は6人から始まり今では30回を数え、最大40~50人が集まる大きな輪になりました。そして、地元の方々も私たちのように糸島で何かを始めようとする人に対し、人や物件を紹介してくれたり、すごく応援してくれるんですよね。それがありがたかったです。
Q. 現在の仕事について教えてください。
智之さん:2016年8月から、筑前前原駅前で「前原宿(まえばるしゅく) ことのは」というゲストハウスを営んでいます。生活のリズムや休日は、お客さん次第で異なるので一定ではありません。基本的に1日1組、最大6名の受け入れとなっていて、日本各地や海外からのお客様をお迎えしています。世界一周の話を聞きたいという方や、糸島に移住を考えているので相談したいという方もよく来られます。実際に宿泊されて、移住を決められた方が15組以上もいるんですよ。
佳奈さん:私は、ゲストハウスの仕事のほかに、前原商店街にある「古材の森」という築118年の元豪商のお屋敷を使ったレストランで、週3日働いています。ゲストハウスを開く準備をしている頃からお世話になっているのですが、店長さんが歴史に詳しい方で、お話しているとすごく勉強になります。
Q. ゲストハウスを開くために、どのようなことをしましたか。
佳奈さん:場所は糸島市の中でも前原地区か加布里(かふり)地区辺りを考えていました。糸島市の玄関口でもある前原は交通の便もよく、観光客も訪れやすい場所。一方、加布里の辺りは海が近いので、糸島らしさが出せるかなと思っていました。前原地区の筑前前原駅前に決めたのは、「いと会」で出会った不動産関係の方とご縁があったから。便利な場所の物件を紹介していただけました。
Q. 地域の活動なども行っていますか。
佳奈さん:前原がさらに魅力的な場所になる活性化の一端を担えればと思い、いろいろなことをやっています。例えば、私たちはコーヒーが好きなので、前原にある自家焙煎のコーヒー店を巡る「カフェさんぽ」の企画を行ったり、開店準備をしているお店のペンキ塗りをするなどのお手伝いをすることもあります。私たちがゲストハウスを開いた後も、この辺りには13店舗も新しいお店がオープンしているんですよ。
智之さん:糸島の地域プロジェクト「前原もっと楽しもうプロジェクト」にも携わっています。今は地元の山の間伐材を使い、前原商店街にベンチを置く企画を進めています。毎月行われる商店街の清掃活動に参加していた時に、偶然同じく参加をされている方が山を管理しているという話になり、その間伐材を提供してくださることになりました。糸島は、こういった地域の企画が進みやすいのがいいですね。そのほかにも、ゲストハウスのブログを通して、糸島のオススメの場所や飲食店などの情報発信を行っています。地域の魅力発信のきっかけになればうれしいですね。
Q. これからやってみたいことを教えてください。
佳奈さん:宿泊だけでなく、体験もプラスできたらと思い、糸島のサイクリングツアーを計画しています。車だと見逃してしまうようなのどかな風景が糸島にはたくさん。自転車のゆっくりしたペースで糸島を楽しんでもらえたら、と思っています。先日は、岐阜県飛騨市で人気を集めているサイクリングツアーを体験してきました。道行く小学生が、自転車で走る外国人に「ハロー」と挨拶しているのを見たのですが、そういう交流ってすごくいいですよね。時間をかけて、地元の方から応援されるようになったそうなのですが、同じように糸島でも受け入れられるようなツアーにしていきたいと思っています。
Q.実際に糸島で暮らした感想を教えてください。
佳奈さん:自然が豊かだけど、都会が近いのでとても便利な場所です。リフレッシュしたい時はすぐに海を眺めに行けるのがいいですね。ロケーションのいいカフェなども多く、一人の時間を過ごしたい時にも困りません。ただ、糸島半島は意外と広いんです。車がないと普段の買い物とかはちょっと不便かなと思います。住む場所によってはスーパーが遠かったりするので、気を付けておいたほうがいいかなと思います。
Q.移住したことで、どんな生活の変化がありましたか。
佳奈さん:東京にいた頃に比べると、心の余裕ができました。都会では、とにかく毎日頑張って働いていた感じ。それに比べて、今の暮らしは自分のペースで仕事をすることも、自分の時間を作ることもできます。それが大きな変化だと思います。きっと、「こんなに働いているけど充実感がない」とか「このままでいいのだろうか」と、疑問を感じて移住を考える人が増えているのではないでしょうか。移住の相談に来られる方の話を聞いていてそう思います。私もそう感じていたので、その気持ちはよくわかりますね。
Q.福岡県に移住を考えている人にメッセージをお願いします。
佳奈さん:福岡県は糸島をはじめ、魅力的な街がたくさんあります。まずは現地に足を運んでみてはいかがでしょうか。情報が集まる場所に行き、地元の方々に話を聞いてみるのが一番だと思います。観光としてではなく、もう一歩踏み込んで話すことで気づくことが必ずあると思います。
智之さん:糸島に移住を考えているのでしたら、ぜひ私たちのゲストハウスに来てください。相談にのれることも多いと思います。
※当インタビューは、2018年9月3日に行われたものです。
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