移住者インタビュー

LIFE STYLE 鞍手町

2か月間の移住体験を経て、鞍手町での生活を決意。自然を求めていたはずなのに、本当に必要としていたのは「人の温かさ」でした。

移住者DATA

ターン

Profile
播野さんご夫妻(40代、30代)
Data
共に東京都出身。巧磨さんは店舗開発、景子さんはヨガのインストラクターをしながらニューヨークに8年間滞在。2015年10月に、移住体験プログラム「ふくおかトライアルワーキングステイ」※1を利用して鞍手町へ。2016年2月に本格的な移住生活を開始した。
Work
地域推進活動(巧磨さん、景子さん共に)

※1 ふくおかトライアルワーキングステイ
県外からの移住希望者に、福岡県内の市町村に一定期間居住しながら仕事を体験してもらう事業

近所の方と時間を忘れて井戸端会議。こんなこと、ニューヨークにいた頃は考えられませんでした。

巧磨さん

Q. 移住のきっかけを教えてください。

巧磨さん:2年前にニューヨークから帰国する際に、次は田舎で穏やかに生活したいと考えていました。地元の東京から離れるつもりはなく、奥多摩町のような自然の多い場所を探していましたが、なかなかピンとくる物件が見つからなくて…。困っているところに、友人から「ふくおかトライアルワーキングステイ」という移住体験プログラムで、鞍手町のことを紹介してもらいました。でも、正直なところ福岡に住むイメージが沸かなくて、締め切りの前日まで応募しなかったんですよ。せっかくなので応募するだけしてみたら、審査が通りまして(笑)。

景子さん

景子さん:行ってみると、すぐに地域の方がバーベキューパーティーを開いてくれて、歓迎されていることをすごく感じました。特に近所の嶋立輝行さんという方には、毎日いろんな場所に連れて行ってもらったり、たくさんの方を紹介してもらったりしました。子どもたちのために自宅の庭に竹の滑り台を作るなど、とてもパワフルな方なんですよ。もともと警察官として鞍手町に赴任し、定年後も定住している移住の先輩なので、生活するうえでのアドバイスがとても参考になりました。今でも心強い存在です。

嶋立さんご夫妻の自宅の庭にて
嶋立さんご夫妻の自宅の庭にて

巧磨さん:滞在中に配信していた「鞍手町移住体験ブログ」※2にあるとおり、タケノコ掘りや干し柿作り、野焼きなど、たくさんのことを体験させてもらいました。2か月間でしたが2年分くらいの経験ができたと思います。枝豆の収穫体験のときに、「自分で収穫すると美味しいな~」と感動していたら、皆さんから「種を蒔くことからやらないとだめだよ!」って言われたんです。確かに、一から育てることで本当の美味しさを感じられるだろうし、作った人や食べることへの感謝の気持ちも生まれるんですよね。

景子さん:今まではスーパーなどで野菜を買う時も、最終的に仕上げられた“商品”としてしか捉えていなくて、どんな人がどれだけの労力を使って育てたかなんて意識したこともありませんでした。でも収穫体験を通して、店頭に並ぶまでの過程を考えるようになりました。

※2 鞍手町移住体験ブログ
播野さん夫妻が「ふくおかトライアルワーキングステイ」で鞍手町に滞在中、日々の出来事や町の魅力を配信。 https://ijuu-teijuu.pref.fukuoka.lg.jp/blogs/entries/index/3

タケノコ掘りで見事ゲット!
タケノコ掘りで見事ゲット!
自分たちで漬けた漬物は、東京のご家族にも大好評
自分たちで漬けた漬物は、東京のご家族にも大好評

景子さん:体験した後に、みんなでお茶を飲みながら雑談するんです。時間と生活に追われていたニューヨークでは、ぼーっと何もせずに過ごすことは無駄な時間でした。でも、移住体験を機に今までの感覚を一度リセットして自分たちをフリーな状態にしてみたら、それまで無駄だと感じていたような時間が、すごくぜいたくで豊かなものだと思えるようになったんです。道で近所の方に会ったら、30分でも1時間でも世間話を楽しむ。忙しい現代社会の人にとって、こういうゆっくりとした時間が大切なのだと強く感じました。

皆さんの温かさに魅せられて、鞍手町での生活を決意。移住体験の最終日、「行ってきます!」で東京に戻って「ただいま!」で引っ越してきました。

巧磨さん 景子さん

Q. 移住する気持ちはすぐに決まりましたか?

巧磨さん:それが、後半まで決意できなかったんですよ。目の前に山や川があって、おいしい空気があって、親切な方がたくさんいる。なんだか夢を見ているみたいで、自分たちの置かれている状況をいまいち理解できませんでした。でも、皆さんに温かく支えてもらうことで安心感が生まれ、徐々に“住める”と確信できるように。自分たちにとって、自然よりも人の温かさのほうが大切なんだとつくづく感じたんです。これ以上恵まれた場所は、ほかにどこにあるんだろうと思えるようになったので、移住を決意しました。

播野さん もちつき会

景子さん:私は、わりと早い段階で移住を決意していました。ギブアンドテイクの関係が当たり前だったニューヨークと違って、こちらの方たちは単純に“やさしさ”で何かをしてくれるんです。余った物を足りないところへ分けてあげるという“おすそ分け”の精神が、ごく自然に根付いているんですよ。最初は「なぜ差し入れしてくれるんだろう?」と、余計な心配をしてしまうこともありました。

巧磨さん:あまりに野菜をいただくものだから、罪悪感すら覚えましたからね(笑)。ちなみに皆さん朝が早いから、ピンポンが鳴ると妻が「あ~!まだメイクしていないよ~!」と大慌て(笑)。

景子さん:今では、起きたらすぐに眉毛だけは描くようにしています(笑)。移住体験が終わるときに、大家さんに“荷物、置いたままでいいですか?”ってお願いしたんです。皆さんには“行ってきます!”と言って東京に帰り、“ただいま!”で戻ってきました。

Q. ご家族の反応はいかがでしたか?

巧磨さん:ニューヨークよりも近くなるから、何かあった時も安心だねって(笑)。それに僕らの表情が変わっていくのを見て、「いい場所が見つかってよかったね」「いつか遊びに行かなきゃね」と喜んでくれています。

景子さん:「ふくおかトライアルワーキングステイ」から帰ってくる際に、嶋立さんがビデオレターを作ってくれたんですよ。近所の方だけでなく、町長さんまで出演してくれていました。私の父は最初、仕事がたくさんある東京のほうがいいんじゃないかと言っていましたが、そのビデオを見たらどれだけ私たちが大切にされているかが分かったみたいで、「ここなら安心だ」と背中を押してくれるようになりました。

夫婦や地域の方と、ちょっとした感動を分かち合える幸せ。時間にも精神的にもゆとりが生まれました。

Q. 現在のお仕事について教えてください。

巧磨さん:古民家を再利用した「コミュニティハウス・赤れんが」で、様々な地域イベントや移住定住を考えている方へ向けての体験イベントの企画・運営をしながら、僕は英会話教室を、妻はヨガ教室を行っています。ここは、地域の情報発信の場であると同時に交流の場でもあり、海外の方を招いて異文化交流を兼ねた地域の方との持ち寄りの昼食会や、お座敷で聴くミニコンサートなどを開催することもあるんですよ。また、鞍手町シティプロモーションの公認サポーターとして、地域を盛り上げるイベントのお手伝いなどもしています。友人や知人が少しずつ鞍手町に興味をもってくれるようになり、やりがいを感じています。

コミュニティハウス・赤れんがで海外の方と交流
コミュニティハウス・赤れんがで海外の方と交流
景子さんが教えるヨガ教室の模様
景子さんが教えるヨガ教室の模様
六嶽神社
六嶽神社

Q. 移住して生活に変化はありましたか?

景子さん:ニューヨークに住んでいた頃と比べて、時間にゆとりができました。毎朝、畑に水をやったり、帰宅して作物を収穫したり。また、夫婦そろって外出することが多くなり、会話も増えました。家の近所にある六嶽神社(むつがたけじんじゃ)には、朝よく2人で散歩に行きます。すごく静かで、心が落ち着くんですよ。こういうのんびりとした生活スタイルが徐々になじんできています。

地域の方との交流が生活の原動力に
地域の方との交流が生活の原動力に

巧磨さん:前はお互い忙しすぎる日々のなかですれ違いが多く、コミュニケーションを十分取る余裕もありませんでしたし、いつしか会話もどこか作業的になっていたような気がします。でも移住してからは、「畑にオクラが実ってるよ!」とか「今日、タヌキがいたよ!」とか、ちょっとした感動を分かち合えるように。近所の方とも、同じものを食べて美味しさを共感したり、一緒に農作業で汗を流したり。そういった関わりから受ける刺激が、今の生活の原動力になっています。

巧磨さん 景子さん

Q. そばにいてお互いの変化を感じることはありますか?

景子さん:夫の表情がすごく柔らかくなりました。畑でとても楽しそうに土を触っているんですよ。前は睡眠時間がわずかしかとれずに痩せていたし、ストレスで精神的に余裕がないのを感じていたので…。

巧磨さん:精神的に余裕ができたのは確かですね。ニューヨークは物価が高く、家賃などの生活費を維持するのに追われて、毎日サバイバルのようでした。妻にしても、朝4時に起きて僕の食事を用意してくれ、ヨガの練習、それから仕事に行くという生活だったので、すごく大変だったと思います。鞍手に来て皆さんから可愛がってもらっている様子を見ると、明らかに表情が違うんです。ヨガ教室にしても、ヨガを通して何を伝えたいのかが明確になったようで、教え方も変わったように見えます。

景子さん:運動量の多いハードなヨガからリラックスできるものへと変わり、ヨガの本質に気づくことができました。ニューヨークでは、周りよりもいいポーズをとれるようになりたいと、競う意識が強かったんですよ。

子どもがいるから移住しないのではなく、いるからこそ移住してほしい。そのためには、受け入れ態勢を整えることが大切です。

巧磨さん 景子さん

Q. 今後はどのような地域活動をしていきたいですか?

巧磨さん:鞍手には、JRの駅があり、高速バスが通り高速道路のインターチェンジもあります。交通の便がいいので人が流出しやすいのかもしれませんが、逆に言えば、来てもらいやすいと思うんです。だから、収穫体験など手ぶらで気軽に楽しめるイベントを企画して、国内外問わず多くの方に来てもらいたいですね。昔ながらの日本家屋で、人々のまごころに触れる。なんでもあるような観光地ではなく、温かな触れ合いができる場所にしたいです。

景子さん:私は、シングルマザーを対象にした体験プログラムがあればいいなと考えています。東京都内だと仕事をするにも子どもを預けられないという問題がありますが、こちらだと近所のお年寄りに協力してもらうなど、なにか方法があるはず。子育てのサポートが整うことで女性の移住者が増え、人口増加にもつながると思うんです。

巧磨さん:シングルマザーにしても夫婦にしても、子どもを軸にして生活を考えている人たちに向けたプログラムは必要だと思います。近所の室木小学校の生徒たちを見ていると、都会の子どもたちよりも生き生きしているんです。子育てをするうえで、環境はすごく大切なんだと実感しました。

景子さん:子どもがいるから移住を諦めるのではなく、子どもがいるからこそ移住してもらいたいんですよね。授業の様子を見させてもらったんですが、生徒の人数が少ないので、先生の目が行き届きやすいんです。コミュニケーションがとれて、生徒たちもいろんなことを学べていると思います。

巧磨さん:これからは、安心して移住してもらえるように、受け入れ態勢をもっと整える必要があると思います。僕らは地域活動を通して移住体験の方を楽しませることができても、就職面など現実的な部分はカバーできません。先日、町の担当の方に、移住体験ツアーのコースに役場を加えて、どんな受け入れ態勢があるのかを説明してもらうようにお願いしました。バカンスではないので、現実的な生活をイメージしてもらったうえで、移住したいと思ってもらうことが大切なんです。

Q. 移住を考えている方にメッセージをお願いします。

巧磨さん:移住を考えていたら、まずはそこに行って町の雰囲気や人の温かさを感じることが大切だと思います。そのきっかけ作りとして、「ふくおかトライアルワーキングステイ」のようなプログラムは有益です。僕らも移住する前は、地域にどう馴染んでいいのか不安でしたが、鞍手町では生活面のセットアップなどウェルカムな態勢を作ってもらえたので本当に助かりました。

景子さん:鞍手の魅力は、なんといっても人の温かさ。そして皆さんがとても個性豊かだということ。いろんな技術をもっていて、それぞれに真剣に取り組むものがあるんです。円覚寺の裏山には、皆さんが自分たちだけで建てたログハウスがあるんですよ!話をしているだけですごく刺激になるので、まずは足を運んでみてくださいね。

円覚寺の裏山にあるログハウスにて
円覚寺の裏山にあるログハウスにて
円覚寺の裏山にあるログハウスにて

※当インタビューは、2016年8月26日に行われたものです。

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