Uターン
- Profile
- 鹿田 典夫さん(57歳)
- Data
- 東京でカメラマンをしていたが、父の他界を機にUターン。現在は地元で、父の跡を継ぎ写真館を営んでいる。
- Work
- 写真館経営
Q. 移住のきっかけを教えてください。
写真館をやっていた父が急に亡くなりましたので、Uターンして来ました。女房に相談しましたところ、「私は帰らない」という言い方をされまして、加えて、子どもも小さかったんで、最初はどうしたものかと思ってたんです。最悪は、私だけでも帰ろうと思っておりました。でも、子どもが納得してくれたのか、「僕、お父さんと九州に行く」と言ってくれて、最終的には家族みんなで帰ってこれました。
とにかく、父の他界が急でしたんで、あんまり悩んでいる時間もなくてですね。地元の学校のアルバムを作る仕事がもう動いていたんで、その関係上、どうしても早く帰ってこなくてはいけなかったんです。
Q. 住宅はどうやって探しましたか?
実家の近所にアパートを借りて住んでるんですけど、偶然、友達に不動産屋が何人かいましたので、彼らに紹介してもらいましたね。何かと頼れる友人がいるっていうことは、Uターンする上で正解だったのかなとは思いますね。
Q. 福岡で生活を始めてからの一番の変化は?
福岡に来てからは空いてる時間が多いので、それをどう使っていくか、いろいろと考えてはいたんです。女房からも、「東京にいた時の方が、もっとたくさん写真を撮ってたよね」という言い方をすごくされていましたし。今でも女房から言われるんですけど、「東京にいた時に撮った写真が一番いい」ってですね。そしたらやっぱり、「この野郎!」っていう気持ちにはなりますよね。だから、「どうにか、いい作品を作らなきゃいけない!」と、最近は思いますよね。
だから、昔からあるいろんな写真の技術を調べてたんですけど、偶然に、ゴム印画法(※1)という技法を知り得て、「自分でできないかな」と思ってやり始めました、なんとか今、形になってるんですけど、なにせ、太陽の紫外線で焼き付ける技法なので、秋から冬にかけては何もできないんですよ。でも、なんとか楽しんでやっております。別段、この技法を皆さんに伝えていこうとは、これっぽっちも考えてないんですけど、とりあえず、「こういうのがあるんだよ」ということを、みなさんに知ってもらうために続けていきたいなとは思ってます。
あと、「知ってもらう」っていう意味では、写真の撮り方というか、カメラの使い方をみなさんに教えることができたら面白いかなという感じはしています。最近よく、「鹿田さん、写真を教えてください!」と言われるんですけど、みなさん、ピントとか絞りとか、その辺の仕組みを分かってらっしゃらない。だから、「普通のデジタルカメラでもきれいに撮れるんだよ」ということを伝えられたら、いいかなと思いますね。
(※1) ゴム印画法:感光液を塗った紙の上にネガフィルムを重ねて、太陽の紫外線で感光液を反応させることにより、ネガフィルムに写った被写体の色や明暗を紙に焼き付ける写真技法。この焼き付け作業を数回繰り返す必要があるため、完成には数日から数週間かかる。通常の写真に使われている銀塩印画法に比べて再現できる階調域が非常に狭いため、完成した写真が「絵画調」に見えるのが特徴である。(1)
Q. 福岡に来て良かったことは?
子どもたちをいろんな場所に連れて行けるようになりましたね。車で行けばどこでも行けるし。東京の場合は、結構、お金がかかってしまいますから、なかなかそうはいかないですけど。
あと、やっぱり生まれ育った所なんで、空気とか水とか、全部自分に合ってるのかなっていう気はしますね。実は、東京にいた頃も醤油は福岡から送ってもらってたんですよ。女房が、「絶対、地元の醤油じゃないとダメだ」って言うもんですから。やっぱり、生まれ育った所の味とか空気とかはいいんじゃないのかなぁと思いますね。
Q. 福岡に来て不便なことは?
これは、良かったことの裏返しになりますけど、移動が車じゃないといけないことですかね。それと、歩かなくなったことですね。東京では一駅ぐらい簡単に歩いて行ってたので、そんなに感じなかったんですけど。東京で、たまたま自転車の仕事をやったことがあったんで、それをきっかけに自転車を買って、自転車で通勤してたんですよね。で、東京はすっごい起伏があるんですよ。それに比べてこの辺りはあんまり起伏が無いんで、「ちょっと面白くないな」とか感じることはありますけど。福岡は車社会で一人一台持ってるような状況なんで、ほんと、運動はしなくなってしまいましたね。いけないなと思います。
Q. 福岡の魅力を教えてください。
基本的に福岡の連中って、心に壁がないっていうか、心が広くて温かい連中が多いっちゃないかなっていう気がすごくしますね。変なところで片意地張ってるところはありますけど、でも、基本的には何でも受け入れやすいというか、心の間口が広いというか。それは、福岡の特徴なのかなぁという気がします。まぁ、本人たちは、自分が温かい人間だとは思ってないんでしょうけど。
Q. 福岡に移住を考えている方へメッセージをお願いします。
素直に言えるのは、田舎に来ると都会にいた時よりも余裕が出るから、好きなことやれるっていうことが、いいことじゃないんですかね。美術系って、どうしても個性の問題だけになっちゃうんで何とも言えないんですけど、仕事だけじゃなくて、その他にも自分の趣味をもっと広げられるっていうかね。東京にいた頃は仕事だけに振り回されてたんですけど、田舎はそれだけじゃなくて、他のことも結局しなきゃいけないんで。そっちもできるようになりますよ。そういう仕事以外のものを持ってた方が、逆にいいのかも分からないですね。
あと、アルバム関係の仕事をしているんで若い人たちと話すことがあるんですけど、私は写真しかやってこなかったので、何の資格も持ってないんですよ。だから今、若い連中によく言うんですよ。「とにかく何でも資格を取れよ。取っとけよ。取れるんだったら。後でそれがパワーになるんだから」ってね。何でも楽しまないとしょうがないんじゃないですかね。
※当インタビューは、2014年10月27日に行われたものです。
参考文献
(1)Kenshi Daito, "9. 焼付け作業 / シンプルな技術 | KENSHI DAITO", KENSHI DAITO photograph, 更新日不明
http://kenshidaito.com/alt_process/nojima_yasuzo_9/, (参照2015/02/10)
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