Jターン
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- 福坪龍一郎さん(32歳)
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ラグビー選手
Q. 宗像市に移住するまでの経緯を教えてください。
以前は千葉の関東社会人リーグでプレーしていたのですが、もっと上にチャレンジしたいという強い思いがありました。そこで2014年に、国内最高峰といわれる社会人ラグビーリーグ、ジャパンラグビートップリーグのトライアウトを受けてみることに。その結果、宗像サニックスブルースに声をかけていただいたのが、移住のきっかけです。声がかかるとしたら関東近辺のチームかなと思っていたので、正直びっくりしましたね。福岡には、小学生の頃に水泳の九州大会で訪れたことしかなく、宗像にいたっては縁もゆかりもありませんでした。当時の宗像サニックスブルースの監督から「一度、見に来てみないか」とお誘いいただいたので、妻と2人で現地を訪問。2泊3日の滞在で、チームの練習風景やグランド周辺の環境を確認しました。地元の鹿児島県志布志市と同じように自然に恵まれていて、チームの雰囲気もよかったので移住することを決意しました。
Q. ご家族の反応はいかがでしたか?
鹿児島の両親からは、距離が近くなるので喜んでもらえました。ただ、妻からは猛反対されてしまいまして。東京育ちの妻にとって、九州はどうしても田舎のイメージがあり、暮らしていけるだろうかという不安が大きかったようです。実際、夜になると街灯がぽつんぽつんとあるくらいで、賑やかな関東に比べると外が暗かったんですよ。引っ越したばかりの頃は、よく「3年経ったら関東に帰る」と漏らしていたものです。ところが、生活するうちに「このまま住み続けてもいいかな」と言うようになり、今では「永住したい!」と僕以上に福岡愛が強くなりました(笑)。いざ住み慣れると、寂しいと思っていた街も、静かだな、暮らしやすいなと思えてくるんですよね。妻の両親も、最初こそ福岡に移住することに驚いていましたが、遊びに来てみると「利便性がよくて、想像以上に暮らしやすそう」と言ってくれています。
Q. 奥様が「永住したい」と仰るようになった理由は何でしょうか?
やはり子育て環境の良さだと思います。子どもたちの成長を見ながら、「もう関東には戻れない」と言っていますから(笑)。外で子どもたちを遊ばせているといろんな方から声をかけられ、地域ぐるみで成長を見守っていただいているという安心感があります。どうしても子どもたちを預けないといけない時も、安心して近所の方にお願いできるんですよ。関東にいたままだったら、こんなことは絶対にできなかったでしょうね。また、宗像は子育てのサポート体制が整っていて、妻はよく子育て支援センター「ふらこっこ」※を活用しています。ここではNPO法人の方が、保護者と一緒に子どもの面倒を見てくださいます。小さな頃から多くの人と接しているので、人見知りしない子に成長してくれるのではないかと期待しています。ちなみに宗像は、子どもたちを連れての移動がスムーズです。妻の実家に帰省する際にベビーカーを使用するのですが、関東の駅だと段差が多いうえに、エレベーターも少なく、中はベビーカー2台が入るかどうかの広さ。しかし、宗像の駅はそういったストレスがなく、ホームから改札口までの移動が楽なんですよ。
※宗像市子育て支援センター「ふらこっこ」
https://www.city.munakata.lg.jp/kosodate/w051/010/040/010/130/20150209201927.html
Q. 移住してよかったと思うことを教えてください。
宗像は山や海、川が身近にあるので、子どもたちを気軽に自然のなかで遊ばせることができます。もしも関東で海や川に行こうと思ったら、渋滞でかなり時間をとられてしまいます。ようやく着いたとしても、座る場所もないくらい人が多いといった状況で…。それがこちらだと、平日はほぼ貸し切り状態。おかげで今年の夏は、子どもたちと川で何度も遊べました。自然が身近だという点は、選手生活を送るうえでも大きなメリットがあります。サニックス玄海グラウンドのすぐ裏にはビーチがあり、練習が終わるとアイシングをするために選手みんなで歩いて行きます。潮風を感じながら火照った体を冷ますと、すごく気持ちがいいんですよ。また現在、庭付きの戸建に住んでいるのですが、関東だと1Lのマンションにしか住めないような家賃で借りられているので、経済的に助かっています。庭で子どもたちを遊ばせたりバーベキューをしたりと、家の敷地内だけでも楽しく過ごせるんです。室内で過ごす時も、マンションのように隣を気にすることなく、伸び伸びと遊ばせられるのもいいですね。
Q. 日々の生活で楽しいと感じるのはどんな時ですか?
家族と過ごしている時が一番楽しいですね。最近はキャンプにハマっていて、ラグビーがシーズンオフになると、一緒に久山や宮若のキャンプ場に出かけています。宗像にもファミリーで遊べる場所がたくさんあり、夏になると海水浴も楽しめます。宗像サニックスブルースの試合が行われている「グローバルアリーナ」は、レストランや図書館、遊具広場などを併設。ラグビー観戦だけでなく、さまざまな使い方ができます。少し前に遊具がリニューアルした「ふれあいの森 総合公園」では、子どもたちが大はしゃぎ。買い物でよく訪れる「道の駅むなかた」は、新鮮な海産物や農産物を安く購入できるので妻も喜んでいます。少し足を延ばすと、「北九州市立響灘緑地グリーンパーク(北九州市若松区)」や「海の中道海浜公園(福岡市東区)」といった子ども連れに人気のスポットが点在。ドライブを兼ねて移動していると、海などの自然の景色がとても美しいんですよ。
Q. 移住してご自身に変化はありましたか?
以前住んでいた関東では渋滞が激しいので、スーパーに行くのもひと苦労でした。よく周りから「30分、60分待つことは当たり前」だと言われていましたが、鹿児島出身の僕からするともう苦痛でしかなく…。そのストレスから解放されただけで、ずいぶんとラグビーに専念できるようになりました。また、関東で自衛官をしていた頃は、18時頃に仕事が終わってからラグビーの練習に参加していたので、帰宅するのが23時頃になっていました。それが今は、練習場所から自宅までが近いので、昼食をとった後に一度帰宅できるようになりました。くつろいだり子どもたちと遊んだりすることで、午後からの練習に向けて英気を養うことができています。一日の練習が終わって帰宅した後は、子どもたちを連れて徒歩5分とかからない場所にある公園へ。その間に妻が夕食の支度をしてくれ、できる頃に帰宅して家族みんなで食卓を囲んでいます。あとは、鹿児島の実家に近くなったので、帰省する回数が増えました。千葉にいる頃は2年に1度帰省できたらいい方でしたが、移住してからは、コロナ渦になる前まで3ヶ月に1度くらいのペースで帰省していました。
Q. 仕事でやりがいや嬉しさを感じるのはどんな時ですか?
プレーする姿を見て、「福坪選手みたいにラグビーができるようになりたい」「勇気をもらえました」と言っていただいた時は嬉しいですね。福岡でジャパンラグビートップリーグに参加しているチームは、宗像サニックスブルースだけです。コロナ渦で気持ちがふさぎがちになるかと思いますが、宗像から全国の強豪に挑むひたむきな姿を通して、みなさんを少しでも笑顔にできたらいいですね。また、宗像サニックスブルースは、幼稚園や保育園でラグビーの普及活動を行うなど、地元にしっかりと根付いたチームです。街を歩いていると、小学生からご年配の方まで、幅広い世代の方に声をかけていただきます。サポーターのみなさんは時に厳しく、時にやさしく、心強い存在です。負けが続いたら厳しいことを言ってくださるのでモチベーションが上がりますし、勝ったら涙を流して喜んでくださる方もいます。おかげで“みなさんと一緒に戦っているんだ”と実感し、やりがいを感じながら試合に臨むことができています。
Q. 福岡県の魅力を教えてください。
コンパクトにまとまった福岡は、交通の便が良くて住みやすい街です。運動できる施設が充実しているうえ、都市部と自然が近いため、山や海でのトレーニングも可能です。オフにリフレッシュする場所もたくさんあるので、しっかり休むことでモチベーションの向上にもつながります。宗像も快適性は抜群で、ほとんどの生活必需品が駅の周辺でそろい、車があれば移動はドアトゥードア。1時間圏内で福岡市にも北九州市にもアクセスでき、2時間くらいあれば、大分や長崎の観光地にだって遊びに行くことができます。もちろん、海鮮系をはじめ食べ物も美味しくて、個人的にはお寿司が気に入っています。家族と一緒に移住してきた選手たちにも、住みやすいと評判なんですよ。
Q. これからこの街で、どんなふうに生活していきたいですか?
まだ住み始めて7年ですが、ずっとここで暮らしてきたかのようなホーム感があるんですよね。遠征試合から戻ってきた時に、線路のすぐ横に田んぼが広がり、川が流れているという宗像ならではの風景を目にすると、「帰ってきたな」と心が落ち着きます。今後は、機会があれば地域の行事に顔を出して、積極的にみなさんの輪の中に入っていけたらと思います。すでに町の運動会に参加しているのですが、初めて会う方でもどこか昔から知っているようなフレンドリーさがあるんです。このような温かい雰囲気のなかで過ごすのは、とても貴重なひと時です。
Q. 福岡県に移住を考えている人にメッセージをお願いします。
僕自身、自然に触れ合いながら育ってきたので、今こうして同じような環境で子どもたちを遊ばせることができて、本当に良かったと思います。今後、子どもたちが都会に憧れて宗像を離れても、いつか戻ってきたら、きっと自然に癒されるはずです。最初から都会で育つのよりも、子どもの頃に田舎で過ごしていたほうが、将来、田舎に移住するハードルはぐんと下がるのではないでしょうか。そう考えると、子どもが生まれる前に移住しておいて正解でした。とはいえ、移住先での生活には不安があるかと思います。しかし個人的な経験からして、住めば都とはよく言ったものです。最初は慣れない環境に抵抗があったとしても、僕たちのように少しずつ街のイメージが変わり馴染めるかもしれません。まずは3年くらい、じっくりと腰を据えて生活してみてはいかがでしょうか。
※当インタビューは、2020年10月6日に行われたものです。(オンラインにて実施)
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