移住者インタビュー

LIFE STYLE 柳川市

オーストラリアから“特別なまち”柳川に移住。アジアへ開かれた福岡を拠点に海外と交流、そして地元の人々へ柳川の魅力を伝える。

移住者DATA

Iターン

バリー・シェルトンさん・岡山恵美子さん

Profile
バリー・シェルトンさん(76歳)
岡山恵美子さん(60歳)
Work

バリーさん:シドニー大学名誉教授・アーバンデザイナー
恵美子さん:日本文学・翻訳研究

イギリス・ノッティンガム出身のバリーさんと長崎市出身の恵美子さんはオーストラリアで出会い、結婚。二人ともメルボルン大学やシドニー大学に勤め、バリーさんは都市デザインや建築、恵美子さんは日本語の教育・研究に携わっていた。オーストラリア各地、アイルランド・ダブリンで暮らしたのち、2016年、柳川市へ移住。

長年暮らしたオーストラリアから日本へ。都会に暮らすか、“特別なまち”に暮らすか。

Q. 移住のきっかけを教えてください。

恵美子さん:バリーが大学を退職したあと、オーストラリアを離れることは移住の5年くらい前から考えていました。日本かイギリスか迷ったのですが、オーストラリアと行き来しやすいことと、気候の良さが決め手となって日本に住むことを決めました。バリーが都市デザインの仕事をしている都合上、ある程度の都会に住む必要があるため、東京・大阪・名古屋・福岡あたりを検討していたのですが、私の家族が住んでいる長崎市から車で行ける福岡・長崎・佐賀で探すことにしました。

Q. 移住先として柳川を選んだ理由を教えてください。

恵美子さん:柳川に住むことになったのは、今住んでいる家との出会いが大きなきっかけです。シドニーに住んでいる時からネットで家を探して、良さそうな所があれば、長崎に住む姉にも調べてもらっていました。でも、訪日する時に見に行く予定だった家が売れてしまったりして、遠くから探すことの難しさを感じていました。帰国後は大阪や名古屋の大学の宿舎でそれぞれひと月くらい過ごしたのち、柳川へ。柳川への移住を考える人が一定期間暮らすことができる市の施設「もえもん家(ハウス)」※に滞在する間に、福岡で家を探すことにしました。いま住んでいる家はシドニーにいた時からネットで見ていたのですが、実際に見てみると和洋折衷の趣ある造りや庭があることなどが気に入って、購入することにしました。

バリーさん:洋風の部分は約100年前、和風の部分は約30年前に建てられた家です。特に洋風の造りの部分はデザインクオリティも高く、魅力を感じました。著名な建築家が設計に携わっている可能性があり、今調べている最中です。手直ししながら暮らすことで、文化遺産を維持しているというふうに思える家を見つけることも、住む場所を選ぶ条件でした。そして、柳川は歴史が深く、掘割※が残っているなど、ほかのまちとは違った魅力をもつ“特別なまち”であるという点も決め手となりました。

恵美子さん:そのほかに家を選ぶ時には、日々の買い物ができるスーパー、電車の駅、病院などが近い場所も気にしました。車の運転が難しくなった時に、歩いていろいろな場所に行けるというのは大きなポイントです。

バリーさん:もう一つ、日本の中でも福岡がよかったのはアジアに近いから。私はシドニー大学の名誉教授を続けていて、近年は中国や香港などアジアの大学で授業をする機会も多くあります。福岡には国際空港があり、アジア各地への路線も充実しているのでとても便利です。授業だけでなく執筆もしているので、静かでありながら刺激を受ける場所を探していて、そういう点でも柳川は条件に合致しました。

※もえもん家(ハウス)
https://www.city.yanagawa.fukuoka.jp/kurashi/ijuteiju/yanagawakurasi2.html

※掘割…地面を掘ってつくった水路。

Q. 柳川市の移住体験施設「もえもん家(ハウス)」に住んだ感想を教えてください。

バリーさん:掘割に面し、柳川らしさを感じられるとてもいい場所です。外国人の私にとっては、畳などの日本的な家の造りを体験できるのもよかったですね。数日訪れるだけでは一部しか見えないことも、ひと月住むことで全体が見えてきます。都市の歴史を調べたりして、柳川は特別な場所であるということに気づき、まちに興味を持ちました。

恵美子さん:長崎に比べると柳川は平地が多いので、いろいろ便利だなと思いました。市役所やスーパー、商店街のある京町エリアにも歩いて行けるし、とても便利な場所です。こういった長期で住める場所があるということはとてもいいことだと思います。「もえもん家」がなければ、私たちはこの家を購入することもできなかったでしょう。

研究に没頭できる静かな環境。近年仕事が増えているアジア方面へのアクセスも便利です。

Q. 現在の仕事について教えてください。

バリーさん:現在もシドニー大学に名誉教授として籍を置いています。オンライン授業を行ったり、今年は新型コロナウイルスの影響でできませんが、昨年までは毎年学生を20名ほど柳川に招き、授業やフィールドワークを行ったりしました。

恵美子さん:私もバリーと同じくシドニー大学に勤め、日本語を教えていたのですが、日本に帰ってきてからは教壇に立つことはなく、研究や翻訳が中心です。いまは、中国文学が日本文学に与えた影響について研究を進めています。

柳川を訪れたシドニー大学の学生たち。
柳川のまちの成り立ちや掘割について学びを深めました。

Q. 仕事で不便に感じることはありませんか。

バリーさん:広大な土地をもつオーストラリアの大学では、オンライン講義も一般的。日本に居ても同じように授業ができるのでその点は不便には思いません。ただ、オンラインで学生と会話することはできますが、やっぱり顔を合わせることで出てくるアイデアがあることも感じています。また、若い人と交流することで刺激をもらっていたので、そこは少しさびしい点ですね。

恵美子さん:私はどちらかというと授業よりも研究の方が好きなので、じっくりと取り組める今の環境に満足しています。私たちと同じように、リモートワークができる仕事の人にとっては、すごくいい場所だと思います。

自宅の書斎にて。バリーさんの著書や資料などの本がぎっしり。
リビングでパソコンや本を使って調べものをする恵美子さん。

長年都会で暮らしていたので、地域になじめるかどうか、不安もありました

Q. 移住に際して、ご家族の反応はいかがでしたか。

恵美子さん:シドニーに息子が、メルボルンから車で2時間くらいのところに娘が住んでいるのですが、特に反対はなかったですね。オーストラリアから日本は飛行機で9時間くらい。イギリスだと20時間以上かかります。それを考えると、日本は身近に感じたのかもしれません。

バリーさん:二人とも反対はしなかったけれど、顔はちょっとさみしそうでしたね。

Q. 暮らしの面で不安はありませんでしたか。

バリーさん:仕事で年に一度は日本に来ていたので、生活や文化に対しての不安はありませんでした。ちょっと心配だったのが、柳川は今まで暮らした中で一番小さい都市。なじめるかどうかが気になりました。

恵美子さん:私は田舎育ちなので、環境に関しての不安はなかったですね。オーストラリアではほとんどマンション住まいだったので、庭に出て自然と触れ合うことができるのがうれしいです。

バリーさん:ここの自然環境が故郷のイギリスに似ているんです。植物や鳥など、まったく同じではなくても似た種のものを見つけることができます。自然観察が好きなので庭に飛んでくる鳥を見るのを楽しんでいます。この間は掘割でカワセミを見かけました。

Q. 暮らしに変化はありましたか。

バリーさん:オーストラリアでは、職場に歩いて行ける市街地に住んでいました。買い物する店やレストラン、書店、映画館などが徒歩10分圏内にあるような場所ばかり。そういった便利さから遠ざかったことが暮らしの大きな変化ですね。その代わり、柳川に住んでから車で遠出することが増えました。家族が住んでいる長崎はもちろん、九州各地に出かけています。九州の田舎のほうを訪れて古い建物を見るのも楽しいですよ。

恵美子さん:福岡市に住むことも考えたのですが、もし都市部に住んでいたら、自分が住んでいるエリアでしか行動しなかったと思います。離れているために、福岡県全体や九州全体を見て、いろいろなことを考えるようになりました。

外から来たからわかる柳川の面白さ。地域の人たちと学びを深めています。

Q. 地域との関わりはいかがですか。

恵美子さん:オーストラリアに住んでいた時は、仕事と自宅の往復の毎日。個人主義の国ですので近所付き合いもなかったですね。こちらでは、これまで触れていなかった地域のコミュニティに参加することが増えました。いまは地域の隣組長もやっています。私たちが住んでいる町は、ご近所さんともちょうどいい距離感です。

バリーさん:散歩している時など、近所の方が声をかけてくれますが、会話をするのが難しいことも…。もともと一人でも気にならないタイプなのですが、たまには英語で話せる友達がいればと思います。特に仕事に関わる専門的なことを話せる人がいるといいですね。

恵美子さん:ここで暮らすようになって「水のまち研究会」という任意団体を地元の方々と立ち上げました。柳川は特別なまちですが、長年住んでいる人たちはあまりそのことを意識していないように感じます。まちにとって大事なものを残していくため、そしてまちの人が自分たちのまちを理解するために一緒に勉強しています。これまでに大学の先生や柳川市の都市計画課の方を招いてのセミナーや、バリーの講演などを行っています。意識を変えていく取り組みなので、目に見えないことですし、すぐに成果がでるわけでもありません。長く続けていくことが大事だと思っています。

バリーさん:オーストラリアの学生も柳川のまちを気に入っていました。地元の方々もちょっと目線を変えて、自分のまちをもっと知ろうという風になるといいですね。

お二人がよく散歩に出かける柳川の宮地嶽神社。拝殿は鎌倉初期の建築様式で建てられています。

まちをよく知って移住するために、有益な施設や情報を活用するのがおすすめ。

Q. 移住して感じる、福岡の魅力を教えてください。

恵美子さん:私たちにとっては、ここを起点にアジアに行きやすいというのが魅力です。それと、やはり食が合うということ。バリーは和食が好きで、野菜や海鮮を好んで食べます。このあたりは外食してもおいしい店が多いし、農産物も海産物も質がいいですね。長崎の家族ともちょうどいい距離で、いい関係を保っています。

バリーさん:柳川は安全なところも気に入っています。夜歩いていても怖くありません。オーストラリアは場所によっては、夜絶対に歩けない場所もあるので…。

Q. 移住を考えている人にメッセージをお願いします。

バリーさん:移住の最初のステップとして、「もえもん家(ハウス)」のように、まちに一定期間滞在できる場所で暮らしてみるといいと思います。まちを知るということは、暮らす場所を決める時にとても大切なことです。

恵美子さん:市役所の移住担当などの方と仲良くなるのもおすすめです。私たちも移住の時にお世話になった方たちと今でもお付き合いを続けています。色々有益なことを教えてもらえるので、遠慮せずに相談してみてはいかがでしょうか。

※当インタビューは、2020年9月4日に行われたものです。

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