移住者インタビュー

LIFE STYLE 北九州市

生まれ育った東京へはいつでも帰れるけれど、まだ、帰りたいと思ったことはありません。

移住者DATA

ターン

伊比 えりかさん

Profile
伊比 えりかさん(33)
Work

和布刈神社 職員

東京都出身。美術系の大学を卒業後、アパレル企業に入社し、店舗に勤務する。幼い頃から一度も東京を離れたことがなかったが、和布刈(めかり)神社への転職を機に2019年12月北九州市に移住。神社の職員として働きながら、初めての九州での暮らし、初めての一人暮らしを経験している。

新しい仕事とのご縁があり、北九州へ。自由に動ける最後のチャンスだと思い、移住を決めました。

Q. 移住のきっかけを教えてください。

和布刈神社の職員に採用されたことがきっかけです。実はもともと移住を考えていたわけではありませんでした。地方で暮らすのは楽しそうだなと思ったこともありましたが、まさか当事者になるなんて思っていなかったというのが本音です。

大学を卒業してからずっとアパレル企業の販売職をしていたのですが、忙しい店舗だったので30歳を過ぎたころから体力的にきつくなり始めました。「ずっとこのままでいいのかな」という漠然とした気持ちがありながら、なんとかなっているし、これで十分だと思っていました。

ある時、気になる仕事があればというくらいの軽い気持ちで転職サイトを見ていて、目に入ってきたのが和布刈神社の求人情報でした。まず、神社に就職できる可能性があるということに驚き、和布刈神社について調べてみることに。約1800年という長い歴史をもつ神社であること、そして目の前に関門海峡が広がるロケーションなどを知り、ますます興味が湧きました。大学で日本画を学んでいたこともあり、日本の文化や伝統的なものも好きでしたし、神社にもよく足を運んでいたので、より魅かれたのだと思います。ですが、場所は一度も訪れたことのない福岡県。まったく知らない土地だったので、応募するかどうかとても迷いました。期限のギリギリまで悩み、採用されなくてもいいから行ってみたいと思い、応募することにしました。そして2019年の夏に採用試験を受け、合格をいただきました。

このままの暮らしを続けることもできるけれど、それじゃ一生このままかもしれない。家庭をもっていない今が、自由に動ける最後のチャンスかもしれないと思って福岡県への移住を決意しました。

Q. 移住に際して、不安な点はありませんでしたか。

東京で生まれ育ち、一度もほかの土地で暮らしたことがありませんでした。実家を離れたことさえなかったんです。初めての一人暮らしを始めるのがまったく知らない土地という心配要素が山積みの状況で(笑)。でも、福岡という土地に対しての不安はなく、いいイメージをもっていました。福岡出身の人や福岡に住んだことのある人が口をそろえて「福岡はいいところ」と言うのを何度も聞いていたこともありますし、都会と自然、どちらもある。「きっと大丈夫!」とポジティブに考えていました。

Q. ご家族の反応はいかがでしたか。

採用が決まったら家族に伝えようと思っていたので、話した時はとても驚いていました。特に母親は「東京に仕事はたくさんあるのに、わざわざ福岡に?」といった反応でした。でもめったにないご縁ですし、このタイミングを逃したくないと思っていたので家族とよく話し、最終的には心配されつつも「せっかくの機会だから行ってみたら。一度やってみなさい」と背中を押してもらえました。

Q. 移住前に準備したことはありますか。

福岡県移住・定住ポータルサイト「福がお~かくらし」を見て記事を読んだり、東京交通会館にある「ふくおかよかとこ移住相談センター」に行ってみたりしました。移住の3~4週間前まで働いていたので、なかなか準備が進まなかったのですが、移住相談センターにはもっと早く行っておけばよかったと思います。とても親身になって調べていただき、福岡の情報を色々と教えてくださったので、移住を考えている人は一度行っておくといいですね。

生活リズムが整って心も体も元気に。東京との距離を感じることもありません。

Q. 現在の仕事について教えてください。

和布刈神社の一般職として働いています。神社には神事などを執り行う神職とそのほかの業務を行う一般職があります。私は神社に参拝される方々の対応を中心に、御守りや御朱印などのお渡しを行っています。そのほか書類作成などの事務作業や、境内の清掃などが主な業務です。以前はアパレルの接客をしていましたが、お客さまが多い店舗だったので、スピード重視の対応が中心でした。いまは、一人ひとりの方に丁寧に接することができるのがうれしいですね。

また、私が働き始めたのと同じ時期に授与所が新しくなり、御守りなどの授与品も一新しました。境内には古い建物を改装したお店もあり、歴史を大切にしながら同世代の方が関心を寄せてくださる新しい取り組みが多い点も素敵だと思います。半年と少し経ちましたが、風通しもよくのびのびと自由に働かせてもらっています。そして、最初に魅かれたこのロケーションも心を癒してくれます。少し疲れた時も境内から海を眺めていれば気持ちが落ち着きます。

新しくなった授与所。お札や御守りの授与のほか、御朱印を書くことも。
境内を清掃。目に入る関門海峡の風景に心が癒されるのだそう。

Q. 移住前から変化したことを教えてください。

生活面が変わりました。以前はシフト勤務だったのでリズムが乱れがちで、疲れがたまって休日はぐったりということも多かったんです。今は、仕事の時間が決まっていて、残業もほとんどありません。リラックスして生活できていると思います。初めての一人暮らしも楽しめています。毎日の暮らしに必要なものは周りにそろっていますし、何か大きな買い物をする時は小倉まで出かければ十分。車の免許を持っていないのが不安でしたが、普段の生活には自転車で十分ですし、電車やバスといった交通の便もいいので困ることはありません。

気持ちの面では特に大きな変化や戸惑いはありませんでした。きっと東京が恋しくなるだろう、1か月くらいで帰ることになったらどうしよう(笑)と心配していたのですが、そんなこともなく。いまの時代、インターネットがどこでも使えて連絡を取りやすいので、そんなに東京から離れたところにいるという感覚がないのかもしれません。もちろん外に出ると福岡ですが、東京に帰りたいという気持ちは今のところないですね。これまで挑戦したことがなかっただけで、意外と適応できるものだなと自分自身も驚いています。

Q. 休日はどのように過ごしていますか?

いまは、掃除やたまった家事をすることが多いです。やっと仕事やこちらでの暮らしが落ち着いてきたころに、新型コロナウイルスの影響があり、移動や人との交流が制限される状況になってしまいました。本当は福岡県内の神社や美術館、観光地に出かけたり、福岡市内に遊びに行ったりしたいのですが、まだ難しく…。これからの楽しみにしたいと思っています。

門司港レトロ地区を散策。これからお気に入りのお店を開拓するのが楽しみ。
和布刈神社近くのノーフォーク広場は、門司港らしさを感じられる場所です。

後悔をしないために、タイミングを逃さないで。暮らしやすい福岡は移住先としておすすめです。

Q. 福岡のどんなところが気に入っていますか。

やはり、食べ物がおいしいところです。たとえば魚など、東京で食べるものとはやっぱり違います。お刺身とかお寿司とか、スーパーで買ったものもとてもおいしく感じます。それと福岡のうどんが好きになりました。優しい出汁にふわっとした麺、ごぼう天やとり天も好きですね。醤油がきいた東京の出汁も好きですが、違ったおいしさがあります。買い物に行って関東では見かけない食材を発見したりするのも楽しいです。それと、私が好きな8枚切りの食パンを見かけないことにびっくりしました。九州では6枚切りが主流なんですね。住んでみると思いがけない発見があったりします(笑)。

そして、実際に移住してみて福岡の暮らしやすさを感じています。大きな都市部がありつつ、ちょっと足をのばせば山も海もあって自然が豊かなのがいいですね。都市部でも、東京とは人口密度が違うのでゴミゴミしていないのが快適です。ほどよく賑やかで、自然もあって、バランスがいい場所だと思います。

Q. これから福岡でどう暮らして行きたいですか。

地域と繋がりの強い神社で働いているので、お祭りなどの参加も楽しみにしていたのですが、この半年くらいは難しい状況でした。もう少し自由に動けるようになったり、人との交流を楽しめるようになったら、地域の方々と交流したり、友達をつくったりしていきたいです。

Q. 移住を考えている人にメッセージをお願いします。

移住したい気持ちがある人は、思いきって行動に移してみるといいと思います。悩んでいるだけでは何も変わりません。私はこのタイミングで動かないと、きっと何年か後に後悔すると思って移住を決めました。迷っているのであれば、「ふくおかよかとこ移住相談センター」に行ってみるとイメージがつきやすいのではないかと思います。暮らしやすい福岡県は、移住先としてとてもおすすめです。

※当インタビューは、2020年7月29日に行われたものです。

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