Jターン
- Profile
- 阿部 大輔さん(42歳)、めぐみさん(36歳)、結凪ちゃん(6歳)
- Data
- 大分県出身の大輔さんは、大学進学に合わせて広島へ。そのまま物流関係の会社に就職し、広島県出身のめぐみさんと結婚した。2019年3月、家族3人で広川町に移住。大輔さんは心機一転、介護職に挑戦。めぐみさんは役場の臨時職員として働く傍ら、フリーマーケットなどイベントの企画・運営にも取り組んでいる。
- Work
- 大輔さん 介護士
めぐみさん 広川町役場の臨時職員
Q. 広川町に移住するまでの経緯を教えてください。
大輔さん:もともと広島に住んでいたのですが、長男ということもあり、大分にいる高齢の両親のことが気になっていました。大分ではなくても、せめて九州内の近い場所に移住できないかと考えていたところ、広川町に妻の友人がいたので相談してみることに。その方に、「ふくおかよかとこ移住相談センター」を紹介してもらいました。さっそく訪ねてみたところ、窓口の方が広川町をおすすめしてくださったんです。田舎すぎず都会すぎず、人もやさしいのでとても住みやすいですよと。その日のうちに行ってみたのですが、南国のように穏やかな雰囲気で、直感的に気に入りました。高速道路のインターに近いので大分に行きやすいし、公共の交通機関が整っているので、自分が車で通勤しても妻が困ることはありません。引っ越すならタイミング的に、娘が小学校に上がる前の今がベストだと思い、移住を決意しました。
めぐみさん:広島では西区という中心地に近い場所に住んでいたので、最初は福岡市のような都会がいいなと思っていました。しかし広川町は、町役場や小学校、中学校のあるメイン通りがきれいに整備されているし、久留米までもすぐに行けます。それに家賃が、広島の半分で済むんですよ。住みやすさや子育てにおいて、まさにベストな環境でした。
Q. 移住するにあたって準備したことはありますか?
大輔さん:広川町にいる妻の友人から教えてもらった福岡県の移住・定住ポータルサイト「福がお~かくらし」をチェックしました。そこで、福岡の企業が移住希望者を対象に職業体験を行っていて、妻の友人が勤める会社も受け入れていたので、試しに参加してみることにしたんです。結果、職場のみなさんにとてもよくしていただき、街に馴染むきっかけを作ることができました。ちなみに広川町には、「Orige(おりげ)」※というゲストハウスがあります。自分は短期間しか利用しませんでしたが、町内への移住を考えている場合、1日500円で最大20日間宿泊することができます。腰を据えて町のことを調べたり仕事やアパートを探したりできるので、広川町への移住を希望されている方におすすめです。
※「Orige」(外部サイト)…広川町初のゲストハウスとして2018年にオープン。宿泊だけでなく移住に関する相談も受け付けている。
めぐみさん:私は「ふくおかよかとこ移住相談センター」の方に、移住先についての要望をいくつかお伝えしました。スーパーが近くにあることやお風呂がきれいであること、あとは虫が大の苦手なので虫が家に出ないということも(笑)。また、スムーズに引っ越しができるように、少しずつ断捨離を進めていきました。
Q. 移住してからの広川町の印象を教えてください。
大輔さん:住んでみて感じたのは、人がとても温かいということ。さまざまなシーンで、やさしさに触れることができます。同じアパートの住人の方々に挨拶回りをした時も、「子どもが小さいのでうるさいかもしれません」と伝えたら、「うちのほうこそたくさんいるのでうるさいですよ」と歓迎してくださいました。
めぐみさん:子どもを保育園に送っていると、すれ違う人たちからごく自然に挨拶されるんですよ。なかには、お年頃の中学生男子たちもいます。こういった環境のなかで子育てができるのは、親としてとても安心ですね。
Q. 移住してよかったなと思うことを教えてください。
めぐみさん:主人とのコミュニケーションが増えたことです。家庭や仕事、お互いのメンタルのことなど、いろいろなことを話せるようになりました。広島にいた頃は、主人が仕事で疲れきっていたのでピリピリしていたんです…。
大輔さん:娘にもその雰囲気が伝わっていたようで、あまり話しかけてこなかったんですよ。移住する前に、街を案内してくださった方が「福岡は時間の流れがゆったりしていますよ」とおっしゃっていました。その時はピンときませんでしたが、今ではすごく共感できます。せっかちな人が少なく、車を運転していても道を譲ってくれるんですよ。こうした穏やかな時間のなかで生活するうちに、気持ちに余裕が生まれました。「家族とどこへ遊びに行こうか」「休日は家事を手伝おう」と、前向きなことを考えられるようになりました。
Q. 移住してお子さんに変化はありましたか?
めぐみさん:広島にいた頃は甘えん坊で泣き虫でしたが、移住してからは自分のことを自分でするようになりました。また、やさしくしてくれた人に対して、きちんとお礼をすることも身についたようです。引っ越したばかりの頃、私がある製茶会社の方から「うちで働いたら?」と声をかけてもらっていたんです。それを娘が覚えていたようで、その会社が出店したイベントで、商品を持って「美味しいよ!」と宣伝して回っていました(笑)。
大輔さん:確かに頼もしくなりましたね。今後、娘が自分からやりたいことを見つけたら、習い事をさせてみたいです。いろいろなことに挑戦させながら育てていけたらと思います。
Q. 現在の仕事について教えてください。
大輔さん:病院で介護職に従事しています。患者さんの入浴やトイレの補助など、看護師のサポート業務を担当。介護はまったくの未経験ですが、前々から興味があり、学生時代にヘルパー2級の資格を取得していました。広島時代はフォークリフトに乗る仕事をしていたのですが、今は物ではなく人が相手。直接「ありがとう」と感謝された時は、本当に嬉しいですね。3年の職務経験を積んだら、介護福祉士の資格をとりたいと考えています。
めぐみさん:私は役場の臨時職員として、窓口業務を行っています。移住したばかりの頃に手続きで役場に行ったら、窓口の方が丁寧に接してくださり、「こんな職場で働けたらいいな」と思っていました。そしたら偶然、ハローワークのホームページで見つけることができたんです。近くに娘の通う保育園があるので、通勤に合わせて送り迎えできる点も助かっています。
Q. 地域ではどのような活動をされていますか?
めぐみさん:手芸品などの小物を作ることが大好きで、広島時代はフリーマーケットなどのイベントに参加していました。現在は、広川町の友人から誘われて、「○△□(まるさんかくしかく)」という地元の主婦が集まるグループに所属しています。フリーマーケットや花見などのイベントを自分たちで企画・運営。私もハロウィンのイベントを企画して、子どもたちにメイクをしたり、古着で装飾物を作ったりしました。活動を通して感じたことは、福岡のみなさんは物事に対して肯定的で乗りがよいということ。イベントを企画すると、「やってみよう!どうする?」と乗ってきてくれるんですよ。
Q. これからこの街で、どんなことに取り組んでいきたいですか?
めぐみさん:現状、「○△□」がイベントを行う場合、施設やスペースを借りる必要があります。いずれは拠点となる施設を作って、主婦のみなさんが、趣味をお金に換えられる環境を整えられたらいいですね。
大輔さん:夫婦の目標としては、週末や年末年始だけでも、里親としてご両親のいない子どもを預かりたいと考えています。もともと子どもが好きだという理由もありますが、社会のためにできることがないだろうかと思いまして。福岡では役場や病院に行くと、里親を募集するパンフレットをよく見かけます。実際に、私たちと同じ世代の里親も多いそうですよ。
Q. 福岡の魅力を教えてください。
大輔さん:福岡の魅力は、やはり食べ物が美味しいということですね。しかもスーパーなどに行くと、野菜や肉といった食材が安い。物価の水準や仕事の求人数を考えても、福岡に移住して正解でした。
めぐみさん:広川町は"ものづくりの街"と言われていて、伝統工芸の久留米絣をどのように活用していくかという活動が盛んです。町には「Kibiru(きびる)」※という時間制で利用できるアトリエがあり、先生に教えてもらいながら手芸作品を作ることができます。今日、私が着ているエプロンもそこで作ったものなんですよ。
※「Kibiru」(外部サイト)…ファッションやテキスタイルなどをキーワードにした、ものづくりの拠点。誰でも格安で利用することができる。
大輔さん:移住先の情報はインターネットで簡単に調べられますが、それだけではなく、実際に現地に足を運ぶことをおすすめします。そうすることで街の雰囲気がつかめるし、現地の方と話すことで具体的な情報を得られるはずです。
めぐみさん:街のことを案内してくださる、コンシェルジュのような方がいると心強いですよ。私たちの場合、地域おこし協力隊の方に、一緒に不動産屋さんを回るなどとても親切にしていただきました。ただし、街に住むのはほかの誰でもなく自分自身。「周りになんとかしてもらおう」ではなく、「自分の力でしっかりやっていこう」という強い気持ちを持つことが大切です。また、理想が高すぎるとなかなか移住先は決まりません。どこを選んでも「完璧はない」と、割り切ることも必要だと思います。
大輔さん:最初の一歩を踏み出すのは、勇気のいることです。しかし、行動しないことには何も始まりません。いろいろと不安はあるかと思いますが、「自分に合わなかったら次の場所を探せばいい」という気持ちで、まずは新たな一歩を踏み出しませんか?
※当インタビューは、2019年12月14日に行われたものです。
こちらのインタビュー記事もおすすめです
-
久留米市 Iターン
オンラインイベントで、事前に地元の方々と交流。たくさんお話できたので、移住後に会った時は、まるで昔からの知り合いのようでした。
グラフィックデザイナー 髙橋 那月さん
-
柳川市 Iターン
オーストラリアから“特別なまち”柳川に移住。アジアへ開かれた福岡を拠点に海外と交流、そして地元の人々へ柳川の魅力を伝える。
シドニー大学名誉教授・アーバンデザイナー バリー シェルトンさん、 日本文学・翻訳研究 岡山 恵美子さん