Uターン
- Profile
- 北島 勇さん(42歳)、美香さん(41歳)、果乃ちゃん(6歳)、古都くん(1歳)
- Data
- 共に大木町出身。勇さんは、埼玉でシステムエンジニアとして10年ほど働いていたが、独立開業のため退社。美香さんは、東京で傘デザイナーとして働いていた。お二人は、中学の同窓会がきっかけで再会、結婚し、2011年からベーカリー「二コパン」を営む。
- Work
- 自営業(ベーカリー経営)
Q. 移住のきっかけを教えてください。
勇さん:もともと埼玉で、10年くらいシステムエンジニアの仕事をしていました。しかし周りは、休日出勤で家族との時間を犠牲にしている状況。自分の将来を見据えたら、長くは続けられないと思い退職を決めました。前から「家族みんなで仕事をしたい」という夢があり、ベーカリーがそのイメージにぴったりでした。といっても、当時はまだ独身でしたけどね(笑)。妻と出会ったのは、退職してパンの学校に通い始めてからです。
美香さん:中学の同窓会で久しぶりに会ったんです。ちょうどその頃、私は東京で傘のデザイナーをしていました。仕事は順調でしたが、30代半ばに差し掛かったところで、結婚や出産を意識するようになって。東京で子育てをするのは難しいなと考えていたとき、主人と再会しました。まだ交際もしていないのに、「ベーカリーだったら家庭をもちながら働ける」と思い、お店の出店準備を手伝わせてもらうことに。同じ関東に住んでいたので、それからは二人でよくパンの食べ歩きをしました。
勇さん:最初は一人でお店をやるつもりだったので、関東エリアのお客さんが集まりそうな場所での開業を考えていました。しかし妻から、お互いの地元である大木町に戻ることを提案されたんです。両親からは最初、会社を辞めることには猛反対されましたが、戻ることが決まったら、すごく喜んでもらえました。
美香さん:まだ彼とは付き合っていませんでしたが、漠然と「この人と一緒になるんだろうな」と感じていました(笑)。お店と育児を両立させるのであれば、両親のいる地元でやるのが一番だと思い提案したんです。それに、大木町にはパンのお店が少ないので、わざわざライバルが多い場所を選ぶ必要もないのかなと。
Q. 移住に際して、何か準備はされましたか?
美香さん:移住当初はお互いの実家に住んでいたので、しばらく部屋探しの必要はありませんでした。お店の物件探しを優先しましたが、不動産屋に行っても気に入った店舗用物件の情報がなくて…。今のお店の建物は、主人のお父さんの知り合いが所有しているもの。前を通る度に、気になってはいたんですよ。不動産屋を通さずに物件を決められたのは、地域の方との繋がりが強い地元だったからこそですね。出店にあたって、主人よりも1年早く戻り、知り合いのネットワークを広げていったのが良かったです。時には、近所のお店やイベントにお邪魔して、お店のチラシを配ることも。実家という拠点があったので、しっかりと出店準備をすることができました。
Q. 移住に際して、不安なことはありましたか?
勇さん:お店をやるという観点でいくと、やはり立地的な不安はありましたね。結果的にたくさんの方に来ていただいていますが、最初は同じ福岡県でも、福岡市内のように人口が多く交通の便がいい場所のほうが有利だと思っていたんですよ。
美香さん:私は、退屈しないかなという不安がありました。東京では毎日が刺激的だったので、田舎のゆったりとした生活に適応できるかなと。実際、近所に居酒屋などのお店があまりなくて、少し物足りなさを感じていました。ところが出産後は、子ども中心の生活に一変。実家や道の駅、ショッピングモールなどがあるので、今はこの環境に有り難みを感じます。
Q. 街の印象を教えてください。
美香さん:海や川、公園に連れて行ったり、春は桜、夏はひまわりを見せたりと、子どもたちを自然に触れさせられる環境です。東京だったら、こんな遊び方はなかなかできなかったでしょうね。また、物にあふれた東京では食材に旬を感じることはありませんでしたが、こちらでは親が野菜を作っているし、道の駅にも季節のものがたくさん並んでいます。食卓で旬を感じることができるんですよ。
Q. 移住してよかったと思うことを教えてください。
勇さん:なんといっても、両方の親が近くに住んでいるので、子育てをしやすいという点ですね。僕らの負担が減るだけでなく、孫を見せられるので親孝行にもなります。子どもが生まれてから、本当にUターンしてよかったと感じるようになりました。
美香さん:関東にいたままだったら、どうやって子育てをしていたのだろうなと思います。正直、想像ができません。主人の実家は私たちの家の目の前にあり、私の実家も車で5分くらいの場所。イベントに出店する日や保育園が休みになる日曜日でも、どちらかの親に子どもを預けられるので、安心して仕事ができます。
Q. 毎日の生活で、楽しいと思うのはどんなことですか?
勇さん:子どもと一緒にいることですね。家族みんなでショッピングモールに行ったり、公園で遊んだりしています。店の定休日に、家にいることはほとんどありません。独身の頃は、毎週のように友達とゴルフや飲みに行っていましたが、子どもが生まれると、そうしたいと思わなくなりました。自分の時間も欲しいとは思わなくなり、買ったままの本がたくさんあるんです。老後にでも、じっくり読もうと思います(笑)。
Q. 移住してご自身に変化はありましたか?
美香さん::今までは東京にいたし、少し照れくささもあったので、親類とは年に数回しか会っていませんでした。でも今は、うちの子どもが親戚の子どもと同世代ということもあり、関係性がとても密になりました。プールや温泉など、しょっちゅう一緒に出かけています。
Q. 地域ではどのような活動をされていますか?
勇さん:町内会の回覧板を配ったり、神社の奉納金を収集したりしています。また、イベントの打ち合わせなど、地域の話し合いにも参加しています。親が地元の方々との関係性を繋いでくれていたから、地域に溶け込みやすいんですよ。
Q.お仕事で、やりがいや嬉しさを感じるのはどんな時ですか?
勇さん:お客さんに「美味しかったよ」と言ってもらった時ですね。お店に来てもらえるというだけでも本当に嬉しいです。自分が作ったパンが店頭に並んだ時は、とても達成感があります。
美香さん:雑貨も販売しているので、お客さんが単にパンを買うだけでなく、それを楽しそうに見ている光景が好きです。また、友達が新しいお客さんを連れて来てくれることもあり、地域に根付いている感じがすごくします。関東だったら、ここまでの繋がりはなかっただろうなと思います。
Q. これから大木町でどんなふうに暮らしていきたいですか?
勇さん:娘が大きくなったら、レジを担当してもらうのが夢です(笑)。いずれは、仲間を作ってお店の規模を大きくしていきたいですね。お店の移転も視野に入れていますが、大木町を出るつもりはありません。地元に根付いて、イベントなどを通して町おこしに貢献できたらと思っています。
美香さん:地元のお店として、大木町をもっと盛り上げていきたいです。また、ここに足を運んでいただくことで、一人でも多くの方に大木町に関心を抱いてもらえたらいいですね。県外に出て行った人に「戻って何かやってみようかな」と思ってもらえたら嬉しいです。
Q. 福岡の魅力を教えてください。
美香さん:福岡は、都会と田舎が適度に共存している点が一番の魅力。飲食店などのお店も、東京に劣らないくらいお洒落です。また、大木町は平地だから見晴らしがよく、災害も少ないので安心。それに、東京では電車通勤で1時間が当たり前でしたが、こちらでは車があれば移動がスムーズなんですよ。
Q. 移住してみて予想外だったことはありますか?
勇さん:意外とアクセスがいいということです。埼玉にいた時は家から羽田空港まで1時間30分くらいかかっていましたが、今では佐賀空港には30分、福岡空港には1時間ほど。LCCも運航しているので、気軽に遠出できます。高速道路のインターチェンジも近く、思っていた以上に便利なところでした。この利便性は、福岡の田舎のなかで随一かもしれません。
美香さん:東京で家賃を払ってきた立場からすると、こちらの安さにびっくり。駐車場が2台分ある物件も、珍しくありません。また、お堀を舞台にした水上競技大会「おおき堀んぴっく」やウォーキングイベント「大木さるこいフェスタ」など、ユニークな催し物が多いので生活していて楽しいです。美味しい食材もたくさんあり、キノコやイチゴはパンに取り入れています。何よりフレンドリーな方たちばかりで、イベントに参加すると「美味しかったよ」「SNS見ました」と、声をかけられることがよくあります。
Q. 移住を考えている方にメッセージをお願いします。
勇さん:埼玉に住んでいた頃は周りがサラリーマンばかりでしたが、今は農業やカフェ経営など、いろんな仕事をしている方がいます。起業したての頃は、「生き方は一つではないんだ。もし失敗しても生活していける」と勇気が湧きました。また、たくさんのイベントが行われているので、起業を考えている方は、参加することで横の繋がりができて可能性が広がるはずですよ。
美香さん:関東にいた頃は、よく職場で「福岡出身なのに、なぜわざわざ東京に来たの?」と言われていましたが、今ではその気持ちがよくわかります。向こうでは、福岡出張の取り合い(笑)。転勤すると、そのまま定住する人も多いんです。福岡は、それだけ魅力にあふれた街だということ。移住におすすめですよ。
※当インタビューは、2018年10月2日に行われたものです。
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