移住者インタビュー

LIFE STYLE 添田町

150年続いた醤油蔵が集いのイタリアンレストランに変わるまで。添田町だからこそ叶えられた夢がありました。

移住者DATA

Uターン

Profile
中村 由美子さん(34歳)
Data
添田町出身。大学進学をきっかけに地元を離れて関西へ。学生時代は飲食店でアルバイトし、社会人となった後も飲食業界で勤務。神戸に夫と共同経営の飲食店を出すが、実家である醤油蔵の廃業を機に添田町へ娘と共にUターン。醤油蔵をリノベーションしたレストラン「ヒシミツ」を2017年5月にオープン。
Work
イタリアンレストラン経営

家業は継げなくても、歴史ある蔵を活かすことはできる。前例のないことも、周囲に支えられて果たせました。

Q. 移住のきっかけを教えてください。

実家は150年くらい続いた醤油蔵でしたが、父が病気にかかり、さらに祖父が亡くなったことで廃業することになりました。「醤油蔵は姉と私の世代に残しても処分が大変だろうから解体する」と両親から連絡がありましたが、それはすごくもったいないと思ったんです。Uターンする前は関西にいて、あちらでも夫婦でレストランを経営していたので飲食店のノウハウだったらある。蔵を改装してレストランにできないかをまず考えました。夫は建設業もやっているのですが、実際に蔵を見てもらったら「これなら使える」と言い出して…。
祖父はずっと、醤油製造を継いでほしいと言っていました。その思いを実現することはできなかったけれど、こうして蔵を使ったお店を添田町に出すことで、違う形で願いを叶えてあげられるんじゃないか。それに関西の店には父母や親戚も来たことがなかったので、こっちでもお店を開けばみんなにおいしいものを食べるもらえるんじゃないか、という思いもありました。だから地元でもお店をやりたかったんです。

Q. 飲食店事業を始めるために、利用した支援制度などはありますか?

改装工事など準備をしていた約3年前は利用できる助成制度もあまりなくて…改装工事を担当してくれる業者さんも自分で探しました。醤油蔵をぜひ活かしたいと思ったものの、「そんな案件の前例がない」と何社も断られてしまって。オープンは予定よりも遅れてしまいましたが、リノベーションを担当してくれた建設会社さんがとても親身になって施工してくれました。
当時は移住者の補助制度が未整備な状態でしたが、町役場の皆さんには制度の外で相談に乗ってもらったり、さまざまな助言やサポートをいただきました。例えば「食材をどこから仕入れたらよいか」といった相談に対して実際に農家さんを紹介してもらったこともありましたし、事業を始めるにあたってのサポートは手厚かったです。そういったご縁でつながった農家さんは年配の方が多くて、「うちの作物がイタリアンなんて目新しい料理になるのが嬉しい」と言ってくださったりするんです。私の方も嬉しかったですね。今は関西で姉妹店をオープンする準備をしているんですが、そちらでも添田町の食材を使いたいと考えています。

ランチコースのメインは選べるパスタ。使用する野菜は全て添田町産です。
前菜とピザにも、野菜やきのこなど、地元の食材を取り入れています。

人と人との温かいつながりを感じる毎日。この土地ならではの実感があります。

Q. 現在のお仕事の様子はどうですか?

現在、従業員は12、3名で、地元の主婦の方や、学生さんがアルバイトで来てくれています。温かくて、頑張ってくれるメンバーばかりで、アットホームなお店です。人と人のつながりを大切にする土地柄なのかなあと思います。
お客さまは今は町外の方が多いですね。北九州の方からも来てくださったりします。都市部の方はドライブと一緒にお食事を楽しんでくれるようですね。
一方、地元の年配の方で、初めてイタリアンを食べて気に入って繰り返し通ってくださる方もいらっしゃるんです。地元の方は法事の後やお正月など、親戚みんなで集まって20名規模で予約してくださったりしますね。人が集まる“場”を提供できたことも、添田町でお店をやってよかったことの1つです。
地元の友人たちもお店に来てくれますよ。予定よりも1年2年遅れてのオープンだったのに、みんな待っていてくれて、やっとオープンしたときは、同級生が初日に予約して同窓会をして開いてくれたんです。10年以上、冠婚葬祭の時くらいしか添田町には帰ってなかったのに、もういろんな友人が応援で食べに来てくれるんです。小学校の同級生なんて、今になって会ってもすぐには思い出せないんだけど(笑)、明るくフレンドリーに来てくれて。みんなの応援が本当に嬉しいです。

ランチタイムは焼き立てピザが食べ放題!
ドリンクオーダーにも対応。多くの業務を手早くこなしていきます。

Q. 生活の変化や戸惑いはありますか?

関西には大学進学をきっかけに移り、娘が一歳になるまでいたので、結構長く添田町を離れていたことになりますね。10年以上離れていたので生活の変化はかなりありましたが、仕事も続けられているし、子育ても周囲にサポートしてもらえて、戻ってきて戸惑うことよりも助かっていることばかりです。関西にいたころは保育園も見つからなかったですし、子どもが小学校上がるまではちょっと働けないかなと諦めていたところもありました。移住して満足しています。

Q. ご家族はどのように過ごしていますか?

夫は平日は関西を拠点に、週末だけこちらに来ています。流行り?の二拠点生活を2年ほど続けていますが、新幹線の往復はやっぱり大変みたいですね(笑)。週末もお店を開けているので、一緒に休日を過ごすというわけにはいかないのですが、夫はこちらに来ると厨房に入ってピザを焼いてくれます。
娘は今三歳で、町内の保育園に通っています。お友だちもみんな添田町の子で、仲良くしていますね。関西のマンションで暮らしていた頃よりお外に遊びに出ることもできて、のびのびと育っていると思います。添田町での暮らしも気に入っているようで、たまに私が関西の拠点に行くときも一緒に行かずに実家の父母と留守番してるんです。「いってらっしゃい」って(笑)。
私の勤務中も父母が見てくれます。父母だけでなくご近所の方も可愛がってくれて、s交代で面倒を見てくれるんですよね。都会のマンション暮らしではちょっと考えられないかな(笑)。地域の皆さんに育てていただいている感じです。

Q. お住まいはどのようにして見つけられましたか。

今の住まいは店舗の改装工事中に、ちょうど近くに新しいアパートが建っている途中だったので、すぐに入居を決めました。結果的には新築アパートを借りましたが、添田町には空き家バンク制度があるので、移住前はネットでチェックしていましたね。一戸建てがメインの地域なので、住まい探しに苦労するんじゃないかと帰ってくる前は心配していましたが、タイミングよくいい家が見つかりました。平日はたびたび実家にも帰っています。

「“好き”を仕事にする」が移住によって続けられました。まだまだ、夢はたくさんあります。

Q. お気に入りの場所やよく利用する施設などはありますか。

お店から車で5分ほどのところに道の駅があって、結構大きな遊具や池がある公園が併設されてるんです。子どもも私もお気に入りで、よく遊びに行きます。ほとんどの施設が無料で利用できて、お子さん連れに人気のスポットですね。(※1)
児童館や図書館も近くにあって、娘の面倒を見てくれる両親も行き先には困らないみたい。子育てには本当にいい環境です。
添田町の中には大きなドラッグストアやホームセンターはないんですが、車で10分ほど走れば、買い物できるところはあるので、車さえあれば生活には不自由しません。移住前は免許を持っていなかったんですが、移住にあたって取得しました。

※1:道の駅 歓遊舎ひこさん 公式ホームページ(外部リンク)

よく利用する、道の駅に併設された公園。子どもと一緒に遊びます。
公園には様々な遊具があるため、退屈せずに遊ばせることができます。

Q.ご趣味やこれからの夢があれば教えてください。

今は仕事が趣味でしょうか(笑)。あれをやりたい、これをやりたいっていうアイディアは、仕事中にもどんどん膨らみます。自分でお店を始める前、学生時代にアルバイトで飲食店に勤めていた頃から、お店の雰囲気を作ったり接客したり、楽しいこと、好きなことを仕事にしてきた感じですね。人に喜んでもらえることをこれからも続けていきたいです。関西にいた頃は、仕事と育児の両立はとても無理だと思っていましたから、移住することで両立の夢を叶えられていると思います。

Q.福岡への移住・定住を考える人へメッセージをお願いします。

添田町は家族だけでなく、ご近所の方や友人たち、地域ぐるみで温かく繋がってくれる土地です。町役場の皆さんも折りにふれて様子を見に来てくださったり、いつも支えられている実感がありますね。
仕事にも子育てにもいい環境に恵まれて、移住大成功だったと思います。

※当インタビューは、2018年9月19日に行われたものです。

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