移住者インタビュー

LIFE STYLE 宗像市

都会育ちだからこそ憧れた里山の暮らし。農のある生活の実践にチャレンジしています。

移住者DATA

Iターン

Profile
野間希代巳さん(46歳)
Data
東京に生まれ、大阪で育つ。東京で出版やWEB制作の仕事に携わった後、鍼灸師へ転身。祖母の介護のために毎月1~2回福岡に通っていたが、2016年7月、宗像市に移住する。
Work
鍼灸師

きっかけは福岡に住む祖母の介護。そして、自然農への関心の高まりでした。

インタビューを受ける野間さん

Q. 移住のきっかけを教えてください。

都会育ちなこともあり、ずっと自然豊かな場所での暮らしに憧れがありました。移住を決意するきっかけになったのは、祖母の介護です。祖母は福岡市に一人で暮らしていたので、私が親類の代表になって介護をしていたんです。毎月1~2回は福岡に来ていたのですが、もう少し頻繁に会えたらと何年か考えて、心が決まったのが2015年の秋。祖母は今年の6月に103歳で他界したのですが、最後の時を一緒に過ごせてよかったと思います。
それともう一つ。私は鍼灸師の資格を持ち、東京で治療院を開いていたのですが、暮らしぶりが健康に直結するということを強く感じていました。毎日会社と家の往復ばかり、ご飯はいつもコンビニで済ませる…そんな生活では、治療を行って改善してもまた調子が悪くなります。日々の暮らし方がどのように健康に結びついているのかということを自ら実践してみたいと思い、東京に住んでいた頃に自然農を行っている農家さんの手伝いなどを始めました。そして、2011年の東日本大震災を受けて、自分の生き方をすごく考えるようになって。一度きりの人生。明日死んでもおかしくないんだから、やりたいことはやろうと思ったのも移住を決意した理由です。

住まいは“里山付きシェアハウス”。山に魅せられて、この場所に決めました。

Q.宗像に住むようになった経緯を教えてください。

元々祖母は福岡市に住んでいましたし、親戚は大牟田方面にいるんです。でも、東京にいた頃に自然農を教わっていた先生が千葉から福津に移住していらっしゃったこともあり、はじめの頃は福津で家を探していました。古民家を借りて、治療院をしながら暮らせたらと思っていたのですが、なかなかいい物件が見つかりませんでした。そこで住宅情報サイトを見ていたところ、宗像に「里山付きシェアハウス」という物件を見つけました。私は里山の再生にも興味があったのでオーナーに連絡を取り、案内していただきました。一番気に入ったのは里山です。里山は人間の暮らしと自然の境目。人の暮らしを営むことができ、自然も壊さない。その姿がここにはあると思いました。こういうところを守ろうとしているのがいいなと思って。そして、ずっと続いていく里山の暮らしに参加できたらと思い、ここに住むことを即決しました。

Q.こちらのシェアハウスについて教えてください。

福岡市内でデザインの仕事をしているオーナーの谷口さんが、おじい様とおばあ様が住んでいた家を改装してシェアハウスにされています。近くには敷地7,200坪の里山があり、素晴らしいロケーションです。定員は4名で、今は私を含めて女性2人、男性1人が生活をしています。それぞれに個室があるほか、みんなが共同で使える居間や、素敵なキッチンもあります。夜は一緒にお酒を飲んだりして過ごすことも。庭には納屋を改修したシェアオフィス(むなかたシェアラボ)があります。月に一度、その1階がバーになり、地元の人はもちろん、福岡市内からも人が集まるんですよ。

シェアハウスの居住者に開放された広々とした居間。
デザイナーが運営するシェアハウスらしく、キッチンもおしゃれ。
朝は小川に面したテラスでコーヒーを。夏の夜にはここからホタルが見られるそうです。
庭にあるシェアオフィス。窓の外には緑が広がる抜群のロケーションです。

Q.土地にすぐなじめましたか?

宗像の中でもここはのどかな集落。地元の方同士の結びつきも強い土地です。女性ひとりで来たら厳しいかな?と少し不安でした。でも、ここで生まれ育った谷口さんが管理するシェアハウスに住んでいるということや、この集落に住む谷口さんのおばさまが色々お世話をしてくださったこともあり、周りの方々に受け入れていただけたと思います。最初は「なんでここに?」と集落の方に何度も聞かれました。「変わっとんしゃーねー(変わってますねー)」って(笑)。ここの方たちは「何もないところ」っておっしゃるんです。でも私は「こんなに素晴らしいものがあるのに!」と思って、実践したい生活の話をすると「ああ、昔ながらの日本の暮らしね」と納得してくださり、協力してくれるようになりました。「自分たちがしていた暮らしを野間さんはやりたいんだな~」と思って、受け入れてくださるようになったのかもしれません。
また、谷口さんが携わる宗像市の「ローカル×デザインアカデミーむなかた」という、都市部と農村部の交流に関心を持つ人たちのワークショップが、移住してすぐに始まり、それに参加できたのも大きかったですね。福津の地域おこしプロジェクト「津屋崎ブランチ」の方や生涯学習を推進する「福岡テンジン大学」の方などがゲストスピーカーとして参加されることもあり、そういった地域活性のために活躍している方たちと繋がることもできました。そういう輪の中に入ることができたので、なじみやすかったのだと思います。

同じ集落にある「川上農園」の川上さんは農業の先生であり、飲み仲間でもあるそう。
オーナー・谷口さんが手がけたツリーハウスプロジェクトにも参加。里山が一望できます。

移住前は仕事のことが不安でしたが、新しい仲間とのプロジェクトも進んでいます。

Q.仕事について不安はありませんでしたか?

やはり、移住後の仕事には不安がありました。東京の鍼灸院にはまだクライアントさんもいますし。すぐ移住に踏み切れなかったのはそこが大きな理由でした。実はまだ東京にも鍼灸院があるんです。今年の夏くらいまでは毎月、最近は2カ月に1度くらい東京に通っていて、こちらでは、週に1度、クライアントさんのお宅へ出張施術に伺っています。ゆくゆくは治療院を開くことができればと思っています。そのほかに、以前雑誌の編集をしていた関係で、私が所属している「日本刺絡学会」の学会誌の編集作業にも携わっています。福岡で行われる学会の基礎講習会で講師を務めることも。また福岡東部(古賀・福津・宗像)を拠点として、有機農法などを取り入れた生産者と食育に取り組む幼稚園や保育園を繋ぐ「ぢおら」というネットワークを準備中なのですが、生産者の一員、自然体験の場の一員として活動に関わっていく予定です。里山保全を行う「フォレストガーデンプロジェクト」のメンバーとしても活動していて、来年からはこのプロジェクトを任意団体として登録していきたいと思っています。樹木のバランスを整えたり、ため池を作ったり、竹が多いので竹炭の焼窯も作りたいですね。子どもたちが自然体験ができるツアーを組むことも考えています。

福岡に移住してから、鍼灸師だけでなく地域活動団体の一員としての顔も持つように。
元雑誌編集者という経験を生かし、所属する日本刺絡学会の学会誌なども手がけています。
講師を務めた、刺絡鍼法の基礎講習会。技術や経験を伝えることも大切な仕事です。
出張鍼施術の現場にて。多くの人が野間さんを待っています。

地元の方々とのふれあいを感じる時、移住して良かったと思います。

Q.移住して良かったと感じるのはどんな時ですか?

地元の皆さんと一緒にいろいろ活動している時です。宗像の方は本当に親切。特にここは農家さんが多い土地なので、野菜をいただいたり、農業について教えてもらったり。「今度、こういうことをしようと思うんだけど一緒にやらない?」と誘ってもらうことも。「種があるからシェアしましょう」とか、そういう人との繋がりがとてもありがたいですね。あとはやはり四季を肌で感じられること。朝は鳥のさえずりで起きて、夜は虫の音を聞きながら眠る。都会では体験できないそういう暮らしが、すごくいいなと思います。

木々に囲まれた道を抜ければ里山の景色が広がります。
自然農法で野菜を栽培する野間さん。「まだ“百姓見習い”です」。
3月、里山で「フォレストガーデンプロジェクト」参加者の方々とタケノコ掘り。
里山保全活動の一環として、井戸掘りのワークショップを実施しました。

土地に力があることを感じる福岡。私のような移住者を可愛がってくれる人も多いです。

Q.福岡県に移住を考えている人にメッセージをお願いします。

福岡ってすごくエネルギッシュな土地だと思います。都会と田舎が近く、多面性がある。そして、どこに行ってもバイタリティに溢れる人たちがいます。みんなオープンで、私のような移住者に興味を持って、可愛がってくださる方が多いのもうれしいですね。生産者の方たちも多いので、なんというか、“土地に力がある”のだと思います。そしてどこに行ってもご飯がおいしいんです。海のもの、山のもの、里のもの…。それも生きていく上で大切なことですよね。

※当インタビューは、2017年10月3日に行われたものです。

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