Iターン
- Profile
- 西塔 大海さん(30歳)
- Data
- 東日本大震災の際、復興支援活動に参加したことがきっかけで地域活動の仕事に興味を持ち、東京からの移住を決意。
- Work
- 東日本大震災の際、復興支援活動に参加したことがきっかけで地域活動の仕事に興味を持ち、東京からの移住を決意。
Q. 移住のきっかけと福岡を選んだ理由を教えてください。
直接のきっかけは東日本大震災ですね。スーパーから物がどんどん無くなって、みんな不安を感じたと思うんですけど、僕らも同じでした。
宮城県気仙沼市出身の友人がいて、彼が震災の当日、東京から実家に帰省していて震災に遭遇してしまったんですね。家が流されてしまって。その彼が大学院を休学するために一旦東京に戻ってきた時に、一緒に物資を買って気仙沼まで届けました。
当時ニュースでは「ボランティアとかが行く所じゃない」と言われていたし、僕は復旧復興や地域おこしの専門家でもないですから、物資だけ置いて帰ってくるつもりでいたら、帰りのバスが無くなってしまって。帰りのバスは、避難所の被災者の人達が東京や都市部に出ていくための予約でいっぱいだったので、僕は乗れなかった。1200人いた中学校の避難所の片隅に寝かせてもらって、そこで少しずつ避難所のお手伝いをするようになりました。そこで、ある問題意識に出会って会社を作ったんです。起業しました。
その会社は、被災者が自分達の手で自分達の町を復興させることを目的に、復興事業を仕事化するという会社です。震災から1ヵ月後に立ち上げて、100人雇って、従業員の皆さんや地域の人達と一緒に町を元に戻す仕事をしていました。
「キャッシュ・フォー・ワーク」っていう社会学の言葉らしいんですけど、被災者に直接、義援金というお金を渡すのではなく、仕事を作り、仕事をしてもらった対価としてお金を渡すという活動の事例として、社会学の教科書にも取り上げてもらいました。いろんな研究者の方と会う中で、地域おこしとか社会起業とかを僕も初めて習うようになったんです。
その後、震災から4ヵ月~5ヵ月経ってようやく東京に帰って来ることができました。その時、付き合い始めた彼女と「東京じゃないどこかで暮らしたいね」という話になり、彼女の出身がたまたま福岡市だったので、その近辺の九州に移住しようという話になりました。
Q. 移住前の情報収集について教えてください。
情報収集は基本的に全く何もしていません。
僕がそういう地域のことに興味を持ちだすようになったのはやっぱり震災がきっかけで、本当に何もない状況から仕事を作ったりとか地域の方とコミュニケーションをとったりしていました。だから、「どうにでもなる!」って想いもあったし、「なんとかなるところまでやる!」っていう覚悟もありました。「何か入念に準備をして」というつもりもなかったですね。
Q. 実際にどれくらい足を運んで移住しましたか?
2012年の秋に初めて上毛町に来て、山下さんっていう地域のキーパーソンのおじさんにお会いしました。とっても素敵な方だったんですね。NPOの代表や地域づくり団体(市民団体・ボランティア団体)をとりまとめる連絡協議会の会長など、いろいろと地域の顔役をしていらっしゃる方ですね。かつ、自分で木工とか鉄工とか、なんでも作れる人なんですね。その人に一番最初に出会ったんですよ。もうその時に上毛町への移住を決めてました。そして、町長に会いに行って「この町に引っ越して来ます」って言いました。僕の中で決まったので、「もうお試しで来なくてもいいや」と思って、2回目に来たのは引越しの1週間前です。イベントがあったので、ちらっと参加させていただき、「来週引越してきまーす」って感じで。2回ですね。
Q. お仕事について教えて下さい。
町長には「引っ越して来たいです」っていう話をしていたし、町役場の職員の方もいろいろ心配してくださっていました。上毛町でも『地域おこし協力隊』という制度を今度新しく作るということで、その隊員に誘っていただいて、移住直後から上毛町で働かせてもらうことになりました。
最初は全国にたくさんいる地域おこし協力隊と同じで、役場の中で書類作りとかいろんな仕事をしていたんですけど、最初から移住政策を担当することは決まっていたので、「どうかひとつ、山の気持ちいい所に拠点を作りませんか?」っていう話をしました。その頃からこの『古民家の田舎暮らし研究交流サロン』っていう建物を作るプロジェクトを始めたりしたんです。
移住政策としては他に、お試し居住「ワーキングステイ」、大学生向けのフィールドワーク企画、情報発信のためのウェブサイト『みらいのシカケ』などを新しく作ってます。また、このサロンでのお客さん対応などをしております。
Q. 「田舎暮らし研究交流サロン」にはどういったお客様がいらっしゃいますか?
月にだいたい100人ぐらいいらっしゃるんですけど、そのうち6割が町内や九州各地からのお客様で、残りの4割が東京と関西からいらっしゃるお客様ですね。結構、リピーターの方が多いです。お試し居住のワーキングステイでは1ヵ月間空き家に滞在するんですけど、それを経験した方が2度目3度目とここを訪ねて来てくださいます。一緒に地域の方に挨拶に行ったりとか飲み会したりだとか。いろんなお話をここでさせていただいています。
Q. 仕事は楽しいですか?
東京からこちらへ移住してきた時には、新しい人と会う機会は絶対に少なくなるだろうけど、地域のおじさんとかおばさんとか、おじいちゃんおばあちゃん達と話すのは好きだから、それで十分だろうと思っていました。ですが、図らずも、こうして新しい方々、それもいろんな地域の方や、東京・関西でベンチャーをやっている方など、本当にトップランナーの方が訪ねて来てくださいます。そういう方々に新しい刺激をもらえる今の働き方がとても楽しいですね。
Q. その方々は、なぜ交流サロンにいらっしゃるんですか?
よく皆さんがおっしゃいます。「なんか最近、西塔さんのまわり楽しそうだね」って。楽しくしている人のところに人はやっぱり寄って行きたいんですよね。どんなに良いことをしていても、苦しい人のところにわざわざ近づいて行かないじゃないですか。
それから、とても良いウェブサイトをチームと一緒に作らせてもらったので、それを見て来てくださる方もいらっしゃいます。
あとは、行政とか地域活性系のプロジェクトに関わっている方が、上毛町の空き家のリノベーションの仕組みがちょっと変わっているので、勉強したいと言って来てくださいます。
その他にも、もちろん、このサロンは上毛町の移住定住の窓口なので、上毛町への移住に興味のある方々がいらっしゃいます。その方々に、町のファンになって、リピーターになっていただいた時に拠点となる場所が必要です。1日、2日遊びに来るだけではなくて、長期滞在しながら地域の人と関わりを持って、関係性を作る中で移住の話に進んでいってほしいですから。でも、1週間いれば仕事もしなければいけないので、ここにデスクを2つと、コタツとかを用意していて仕事ができる体制にしています。やっぱり、1週間自分の仕事を持って遊びに来れる人っていうのは、比較的自分の裁量で仕事ができる職業の方が多いです。今までいらっしゃった方だと、フリーランスのデザイナーとかプログラマーとか、小説家とかコピーライターとか、そういう方々です。ウェブマガジンの編集チームなんていう方もいらっしゃいましたね。
Q. 移住して良かったことは何ですか?
妻と過ごす時間が長くなりました。僕は仕事場の2軒隣に家をお借りしていて、そこから朝、朝ご飯をちゃんと食べてからここに通って来て、お昼休みに家に帰って妻と一緒にご飯を食べています。妻も空き家バンクのウェブサイトを作る仕事を一時やってましたので、ここで一緒に仕事をしたりと、家族と過ごせる時間がとても長くなったのがすごくいいなと思っています。
それとおかげさまで集落単位のコミュニティの中に入っていくことができたので、おっちゃん達と一緒に、お酒飲んだりとかごはん食べたりとか、すごく楽しいですね。
Q. 上毛町の良さを教えて下さい。
まず、景色ですね。谷の行き止まりにあるんですよ、この集落は。ここは一番裾野からいくと3~4キロメートル入った谷の行き止まりにあたります。でも、山の中腹くらいまで一気に標高が上がって、240メートルあるので、谷筋を抜けて外側の景色が見える、っていうなかなかありそうでないこの景色、抜け感がすごく気に入っていますね。地理的にはそこが一番気に入っているところです。
それ以上に魅力的なのはこの集落のおじさん達です。おじさんおばさん達がものすごく素敵です。みんな気持ちのいい酒飲みで、「一緒に飲もうや」って言ってがんがん酒飲むけど、夜9時半ぐらいにはもう眠たくなって、うとうとしてて。夜を徹して強制的に飲ませられるみたいなことは一切なく、楽しくお酒を飲めますね。
Q. 東京での生活と上毛町の生活で変わったことは何ですか?
一番変わったのはコンビニに行く回数です(笑)。最寄りのコンビニまで8キロメートルほどあるので、行かなくなりましたね。町に出る回数も多いんですけど、コンビニのお弁当を食べなくて済むようになったし、選択肢にあっても食べなくなりましたね。それが一番変わったかことな〜っていう気がしますね。そのことと体調が改善したこととの因果関係はあえてくっつけたくはないですけど(笑)。
Q. 移住を考えられている方に向けてメッセージやアドバイスをお願いします。
これからの時代の新しい選択肢として、ローカルに住んでみるっていうのはすごくおもしろいんじゃないかなと、僕自身がすごく感じているんですね。
ただ、もちろんそういう生活やライフスタイルが合う人合わない人、できる人できない人っていると思います。自分ができると思っていてもこちらから見ると全然向かない人もいれば、「私そういうの絶対ありえない!」って言いながら、ものすごいおじいちゃんおばあちゃんと喋るのがうまい方とかいるんですよね。なので、一度遊びに来てもらうといいかなって思います。合うか合わないかって、やってみないと分かりません。
ここに来ていただければ、しぜんにそういう関係性を作るお手伝いをいたしますので、ぜひ一度遊びに来てください!
※当インタビューは、2014年12月15日に行われたものです。
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