Iターン
- Profile
- 古橋 範朗さん(32歳)
- Data
- 福岡県福津市津屋崎町に東京から移住。
移住後ご結婚、インタビュー直前にお子様もご誕生。 - Work
- 地域不動産業(家を売るのではなく、地域をPRし、コミュニティに入る人を呼び寄せる不動産屋「暮らしの問屋」)
Q. 移住のきっかけを教えてください。
僕の妻が津屋崎でまちづくり(の活動)をしていて、彼女との結婚を機に移住して来ました。ここに来る前は東京の西国分寺駅近くで、オープンスタッフとして立上げから参加したカフェで働いていました。西国分寺という場所は、このカフェのオーナーが生まれ育った土地で、彼にとっては縁の深い土地でした。だから僕もいつか、自分に縁の深い土地で働きたいという想いがどこかにありました。ここ津屋崎は、結婚する前から何度も来ていて気に入っていたこともあって、移住しようと決めました。
また、津屋崎はきっと、これからまちづくりが盛んになっていくだろうと思っていて、未来に向けてのワクワク感や、「まちづくりに携わることで地域に貢献していける」という期待感が湧いていたというのも大きな理由の一つです。
Q. 地元の方との交流はありますか?
はい。津屋崎には地元の方と交流する機会がたくさんあります。300年の歴史を誇る「津屋崎祇園山笠」をはじめ、他にも、春や秋に地元の人たち主催の行事がちょこちょことあるんですね。そういった祭りや行事に参加したり、(大きな行事はもちろんですが、そういった小さな行事でも町の人たちが実行委員会を立ち上げられますので)実行委員会のメンバーに加わるなどして、顔を覚えてもらうというようなことはよくありますね。
交流していく中で、家をお持ちのオーナーさんと知り合うこともあります。私たちが今、住んでいる家も、そうやって知り合ったオーナーさんに貸していただいてます。
Q. ちょっと変わった結婚式を挙げられたそうですが?
僕らが結婚式を挙げたのは、「波折神社(福岡県福津市津屋崎地区の氏神)」という地元の氏神様でしたが、実は、普段は結婚式はされていないんですね。だけど、昔は地域の氏神様の前で結婚式を挙げるのが当たり前だったという話を聞いて、何とかそれを復活できないかと思ったんです。
そのことを町の人たちに相談して、実行委員会をつくらせてもらいました。披露宴会場の飾り付けをしてくださったり、郷土料理を作ってくださったり、地元の中学生が巫女さんになってくれたり・・・。町の中をみんなで行列になりながら練り歩き、たくさんの方から祝福していただきました。とても貴重で素敵な結婚式になりましたね。
Q. 福岡に移住して一番の変化は何ですか?
一番変わったなと思うのは、時間の流れがゆっくりになったなぁと感じていることです。東京にいた時は、日中は仕事をして、家に帰って来たらプライベートの時間という感じで、仕事とプライベートが分かれていました。こちらでは、(自営業をしていることもあると思いますが、)まず、「暮らし」がベースにあって、その中に、仕事や町の出事(でごと)があるんです。「暮らし」が主となって毎日のリズムを作っていることが心地いいですね。
都会では左脳を使って生きている感覚があったんですけど、こっちでは季節の移ろいを感じたり、夕焼けがきれいだと感じたり、右脳側の五感を使って生きてるなっていう感覚があります。
東京にいた時も、ずっと東京で暮らそうとは考えておらず、もしかしたら地元に戻るかもしれないし、あるいは違う土地でまた新しい職に就くかもしれないっていう、根無し草のような感覚がありました。でも、こちらに来て結婚をして、先日子どもも出来ましたので、この土地で10年20年・・・腰を据えて生きていきたいという覚悟にも似た感覚があります。そう思った瞬間から、この町に「根を下ろした」という大きな安心を感じています。
Q. 仕事について教えてください。
自分の妻が5年前に「地域交流センター津屋崎ブランチ(以下、津屋崎ブランチ)」というまちづくりを行うNPO法人のスタッフになりまして、地元の人たちと津屋崎へ移住したい人たちとの交流イベントを企画したり、空き家を移住者の人たちの受け皿として使えるように、改修して貸し出すという活動を行ったりしていました。僕の仕事は、この津屋崎ブランチの活動を引き継いでいます。
津屋崎も高齢化が進んで、空き家も少しずつ増えてきています。空き家はまちの治安を悪くするなど、大家さんにとっても、近所の人たちにとっても、心を悩ませる種なんですね。その一方で、津屋崎のような自然豊かな町で暮らしたいっていう人たちも多くいらっしゃいます。そんな移住者の人たちとって空き家は、一軒家に住めるかもしれないという希望の種なんです。
僕の仕事は、そんな空き家を大家さんからお借りして、住めるように整えて、移住者に紹介する仕事です。空き家がきれいになることで大家さんも喜んでくれますし、そこに新しく家族が住むことでご近所さんも喜んでくれますし、一軒家に住めることで移住者も喜んでくれます。移住者の方の中にはカフェやショップを開きたいとおっしゃる方がいらっしゃるんですが、そのお店が開店すればお客さんを呼んでくれて、町全体も豊かになります。「空き家」を1つ解決すると、4つも喜びが生まれる、とてもやりがいのある仕事です。
以前、扱わせてもらった空き家活用の実例なんですが、老朽化が進んでいた空き家の大家さんが、取り壊す前に、お友達を介して僕にご相談くださいました。お話を伺って、「僕の方で改修をさせてもらって貸し出しさせていただけませんか?」とお話したら、快諾してくださったんです。家は生まれ変わり、東京からお子さんをお持ちのご家族が移住して来てくださいました。大家さんも、移住者も、ご近所さんも、みんな喜んでくださいましたね。
Q. 福岡の魅力を教えてください。
東京に住んでいた時に比べ、こっちに来ると、近所付き合いも多いし、いろんな町の出事でいろんな方と顔を合わせます。そういったとき、「あぁ。人のあったかさを感じるなぁ」としみじみと思いますね。
地理的には海も近いし、山も近いし、温泉もあるし、それから交通面でも空港は近いし、電車もあるし、コンパクトで便利な場所だなと思いますね。
ただ、冬は意外と寒くてびっくりしました。九州は南の地域なのでもうちょっと暖かいかなと思ったんですけど、津屋崎は港町ということもあって海風も強いですし、とても寒いです。僕は京都出身なんですけども、ひょっとしたら京都よりも寒いんじゃないかなと思うときもあります。
Q. これから福岡に移住を考えている方へのメッセージをお願いします。
僕は仕事柄、移住者の方々の相談を受けることが多いんですが、「今の場所が嫌だから移住して来る」という動機だと、移住先の地域への理解が不十分なまま移住して来ることになります。後で、「こんなはずじゃなかった」という結果になってしまうことも多いので、そういう形での移住はあまりお勧めできません。もし移住をされたいということであれば、まずはその地域に通っていただいて、「ここに住みたいな」という気持ちが芽生えた後に、実際に動きだした方がいい結果を得られると思います。
ただ、『案ずるより産むが易し』だとも思っています。飛び込んでみて初めて分かることも必ずありますから、「移住先で何か嫌なことが起こったとしても、その地域と付き合っていくんだ」っていう気持ちさえあれば、仕事もご近所付き合いもきっと上手くいくと思ってます。だから、もし移住を決めたなら、そこに住んで、そこの暮らしをとことん楽しむ。つまり、能動的になるってことがすごく大事かなと思います。
※当インタビューは、2014年12月12日に行われたものです。
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