移住者インタビュー

大牟田市 長 武志さん(36歳)、真弓さん(35歳)、明音ちゃん(5歳)、佑賢くん(2歳)、連太朗くん

継ぐことはないと思っていた農業を志し、Uターン。地元ならではの人と人との繋がりを感じながら、仕事や暮らしを楽しんでいます。。

移住者DATA

Uターン

長 武志さん(36歳)、真弓さん(35歳)、明音ちゃん(5歳)、佑賢くん(2歳)、連太朗くん(1歳)

Profile
長 武志さん(36歳)、真弓さん(35歳)、明音ちゃん(5歳)、佑賢くん(2歳)、連太朗くん(1歳)
Work

武志さん:果樹農園経営
真弓さん:ジェラート店経営

武志さんは大牟田市出身。福岡市内の大学に通い、就職後は鹿児島県や静岡県での勤務を経験する。真弓さんは大分県出身。進学や就職で北九州市、中国・上海、鹿児島県で暮らした経験をもつ。2人は鹿児島県で出会い、結婚。静岡県での暮らしを経て2017年に大牟田市にUターン移住した。3人の子育てをしながら武志さんは果樹農園、真弓さんはジェラート店を営む。

自分に合った働き方とは?改めて考えた時に家業と同じ、農業に行きつきました。

Q.福岡県に移住したきっかけを教えてください。

武志さん:私の実家は大牟田市で50年以上続くブドウ農家です。小さい頃から手伝いをするなかで、夜が明ける前から働く様子や夏の暑い中で作業を行う姿、自然を相手にする大変さや報われなさを見てきていたので、私自身が継ぐつもりはありませんでした。しかしいざ就職して働き始めると、時間や手段などさまざまな枠を設けられた中での業務に疑問を持つようになって…。自分に合った働き方を考えている時に頭に浮かんだのは農業でした。考えれば考えるほど、生産から販売まで自分でプロデュースできるのは農業しかないと思うようになり、30歳を機に会社を辞めてUターンすることに決めました。

真弓さん:私は鹿児島県でWEB制作関連の営業職をしていたのですが、夫の転勤に伴い静岡県に移住しました。以前の夫の職場は異動が多く、今後の家族にとって負担になると思っていたので大牟田への移住は賛成でした。農業をしたいと聞いた時も「いいんじゃない?」とあまり深く考えずに付いて来ることができました。もし実家が農業で大変さを知っていたら強く反対していたかもしれません(笑)。

Q.移住への不安はありませんでしたか?

真弓さん:高校卒業後から地元を離れ、北九州市や中国の上海、鹿児島県など初めての場所で暮らすことが多かったので、大牟田市で暮らすことへの不安はありませんでした。

武志さん:私の地元なので、夫婦2人にとって初めての場所ではないということも安心に繋がったと思います。不安よりも久しぶりに大牟田市で暮らすことや新しいことに挑戦できることへの楽しみのほうが大きかったですね。

Q.ご家族の反応はいかがでしたか?

武志さん:父は私が「農業をしたい」と言うと農地探しなどに力を貸してくれました。言葉に出してくれたわけではないのですが、心の中ではきっとよろこんでくれていたのだと思います。また、ゆくゆくはブドウ作りをしたいと話したところ、父も「それなら俺ももう少しがんばる」と言ってくれたことが心強かったです。

真弓さん:夫の家族は移住に際して本当に協力してくれました。移住後の生活面のことや、農業を始めるための準備など、お義父さんがいろいろ調べて助けてくれました。

農業に加え、育てた梨やブドウを使うジェラート専門店もオープン。

Q.現在の仕事について教えてください。。

武志さん:私はUターンと共に農業を始め、梨やブドウ、キウイを生産しています。実家の果樹園を継ぐのではなく、独立して「長果樹園」を立ち上げました。ブドウは大牟田市、梨は隣の熊本県荒尾市に畑をもっています。収穫した果物は、祖父の代から営むブドウの直売所で販売するほか、JAの直売所などでも販売しています。

真弓さん:2021年には、大牟田駅そばにジェラート店「カラヘ」をオープンしました。果樹園で育てた果物などを使って、手作りするジェラートを販売しています。

Q.仕事をはじめるにあたり、大変だったことはありますか?

武志さん:大変だったことは数えきれないほどあります。不安はないと思って帰ってきたのですが、譲ってもらった広い梨畑を見た時に、剪定用のハサミさえ持っていない未経験の私がやっていけるのかという不安を覚えました。畑が決まったのが急だったので、帰ってきてすぐに剪定をする必要があって…。梨農家が2ヶ月くらいかけて剪定する広さを素人の私が1ヶ月でしないといけない状況となり、先輩の梨農家さんや父に助けてもらいながらわからないながらに作業を行いました。1年目は手探りだったので、たくさん失敗しましたね。6年目の今でも何かしら失敗しますけど(笑)。

真弓さん:最初のうちは、梨が丸くならなかったりしたこともありましたが、年々品質も上がってきています。品種は新高や幸水、豊水など5種類の梨を育てています。

夫婦で営む果樹園。大きなものでは1玉1kgを超える大玉の梨が収穫できます。
夫婦で営む果樹園。大きなものでは1玉1kgを超える大玉の梨が収穫できます。
店先のベンチで美味しそうにジェラートを食べる、子どもたちのほほえましい様子。

Q.ジェラート店を始めたきっかけを教えてください。

真弓さん:農業を始める前から2人ともソフトクリームが好きで、いつか店を開きたいという話をしていたんです。ドライブに行った時にはその土地のソフトクリームを食べるのが楽しみでした。

武志さん:ソフトクリームは果物との相性がいいですし、果物の廃棄を減らすことにも繋がると思いました。ブドウは粒なので、傷ついている一部を落とせば大丈夫ですが、梨は一部が傷つくだけで商品になりません。そういったものを活用するのに、好きなソフトクリームにして販売してはどうかと考えたんです。

真弓さん:最初は現在のジェラートではなく、隣のみやま市にあるレンタルカフェスペースで果物を使ったソフトクリームやパフェを販売していました。ただ、毎日の営業ではなかったので、ベースの保存がきかないソフトクリームは廃棄も多く、もったいなさを感じていました。そんな時、果樹園の冷蔵庫を新調した際にメーカーの方が小型のジェラートマシンをおまけで付けてくれたんです。それを使って初めてジェラートを作ってみたところ、おいしさがダイレクトに伝わる味わいに驚き、ジェラートにシフトチェンジしました。ジェラートはある程度保存もできますし、量も調整できるので素材を無駄なく使用できます。

そして、メニューの開発や店舗探しなど1年をかけて沢山の方の協力を経て、大牟田駅前にジェラート店「カラヘ」をオープンしました。「長果樹園」で収穫した梨やブドウを新鮮なうちに果汁にして冷凍保存し、できるだけ旬の時期にジェラートとして提供するようにしています。生クリームは大牟田市の「オーム乳業」のもの、牛乳は福岡県産を使い、そのほかの果物や野菜などもなるべく地産地消を考えて素材を選んでいます。

Q.仕事のやりがいを教えてください。

武志さん:最初はできるかどうか不安のなかだったので、最初にジェラートが売れた時はすごくうれしかったです。そして私が作った果物を食べて「おいしかった」という声をいただく時に一番やりがいを感じますね。そして日々仕事をする中で、この道を選んでよかったと感じています。前職では時間に追われたせかせかとした毎日だったので、体を動かしながら自分の裁量で働くことができる農業が私に合っているのだと思います。

真弓さん:夫は会社で働いていた頃と顔つきがまったく変わりました。心も体も健康になっていると感じます。

武志さん:以前の仕事がとてもハードだったので、農業で多少の苦労があっても乗り越えられると思っています。ただ、この仕事で最も辛いのは、台風などの被害を受け、それまでの努力が報われないことがあり得ることですね。

真弓さん:私は、ジェラートが自分の思い通りの味になった時や、お客さまの反応をいただいた時にやっていてよかったと思います。また、小さな子ども連れで並んでいるお母さんやおばあちゃんなどを見ると、子どもに食べさせるものとして選んで来てくれることをすごくうれしく感じます。私たちにも子どもがいるので、なおさらその思いが強くなるのかもしれません。お客さまのその気持ちに応えられるように、素材などを妥協せずに作っています。

この日もジェラートを買いに来た親子が。「おいしい」とお子さんもにっこり。に。
この日もジェラートを買いに来た親子が。「おいしい」とお子さんもにっこり。
定番から季節限定まで10種前後が揃うジェラート。ん。
定番から季節限定まで10種前後が揃うジェラート。

Q.今後の目標を教えてください。

武志さん:農業を主軸に、さまざまなことにチャレンジしていきたいです。規模を拡大して法人化し、雇用を生み出せるような存在になっていきたいです。子どもたちのためにも、大牟田市の未来をつくる一環としてそういった取り組みを考えています。

真弓さん:ジェラート店がオープンする前の朝の時間帯に、おにぎり専門店をオープンする予定です。米農家さんから仕入れるお米を使ったおいしいおにぎりをお届けできればと思っています。

地域の人に見守られながら子育て中。家族にとって暮らしやすい環境を実感しています。。

Q.大牟田市での生活はいかがですか。

真弓さん:3人の子どもを育てる私たちにとって、とてもいい環境だと感じています。大牟田市は待機児童がないので、その分、選択の幅も広がり、きょうだいを同じ幼稚園に通わせることができて楽ですね。他県に住む友人は、上の子と下の子が別の幼稚園と聞いて大変そうでした。そして小さい子どもに対して、地域のみなさんがとても優しいんです。ベビーカーを押していると「かわいかね~」って声をかけてくれたりすることもあります。

末っ子の連太朗くんは、ご近所さんに可愛がられてすくすくと成長中。
末っ子の連太朗くんは、ご近所さんに可愛がられてすくすくと成長中。

武志さん:私たちが忙しい時に、ジェラート店の隣のおばちゃんが子どもを抱っこして散歩してくれていたり、泣いていたら八百屋のおじさんが世話してくれたり。地域のみなさんが一緒に子育てをしてくれているという感じで、恵まれているなと思います。

真弓さん:アクセスのよさもいいですね。鹿児島県の肝付町に住んでいた時は空港に行くのも鹿児島市内にいくのもなかなか大変でした。大牟田市は博多に行くならJR、天神に行くなら西鉄電車と交通手段も選べますし、遠出をするなら新幹線も使えます。子どもが大きくなって進学する時に、通える範囲が広いのはいいことだと思います。

Q.休日はどのように過ごしていますか。

武志さん:農業なので天候によっては休むこともありますが、基本的に一日休みはあまりありません。でも自分で時間の調整ができるので、普段から家族で過ごす時間を作ることができます。今の楽しみは温泉に行くことですね。大牟田市は熊本県と県境にあるので、熊本の「平山温泉」や「玉名温泉」など泉質のいい温泉に気軽に行くことができます。

真弓さん:都会の洗練を感じたい時には、1時間ちょっとで福岡市内に行くことができますし、大牟田市内には大きなショッピングモールもあって便利です。子ども向けの遊具がたくさんある「諏訪公園」にもよく行きます。

長女 明音ちゃん、長男 佑賢くん。きょうだい仲良く遊びます。。
長女 明音ちゃん、長男 佑賢くん。きょうだい仲良く遊びます。

Q.不便を感じることはありますか?

真弓さん:販売イベントなどで福岡市内に行く時などに、もう少し近ければと思うこともありますが、普段の暮らしのなかでは特に不便に感じることはありません。

武志さん:生活に車は必要ですが、渋滞がほとんどないので運転のストレスもないですね。大牟田市は道路もゆったりとしていて走りやすいですよ。

真弓さん:不便というほどではないのですが、方言がわからなくて困ることがあります(笑)。最初は「しとらす※」など独特な表現の意味やニュアンスが理解できなくて。5年経っても、特におばあちゃんたちと話すとまだまだわからない言葉が出てきます。

※方言で「~していらっしゃる」の意味。

Q.Uターンしてよかったと感じることを教えてください。

武志さん:地元だからこそかもしれませんが、暮らしでも仕事でも人と人との繋がりの大切さを感じる毎日です。農業を始める前は、山にこもって一人で黙々と仕事をすればいいと思っていましたが、実際には周りの方々に協力してもらわないと何もできません。暮らしの面でも近隣のみなさんに本当に親切にしてもらっています。そういった関係性の大切さに気付けたことがよかったと思います。

真弓さん:私は子育て環境のよさを感じる時に移住してよかったと思います。勤めながら子育てをするのと自営業で子育てをするのはまったく違うと思います。転勤がないので、安心して暮らすことができるのも家族にとっていいことだと思います。

Q.福岡県、大牟田市に移住を考えている人にメッセージをお願いします。

武志さん:Uターン移住は、新しいことにチャレンジしたい人にはとてもいい選択だと思います。一度離れたとしても助けてくれる地元の人たちの温かさを感じることができました。

真弓さん:大牟田市は子どもをもつ家族にとってとても暮らしやすい場所だと思います。また福岡空港にも佐賀空港にも1時間程度で行けるのでワークスペースを選ばない人にもおすすめです。食にも恵まれていますし、過不足なく暮らしに必要なものも揃うので、きっと充実した暮らしを送れると思います。

※当インタビューは、2023年11月10日に行われたものです。

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