移住者インタビュー

LIFE STYLE うきは市

農業における社員雇用を生み出したい。新たな雇用が生まれることで移住者が増え、街の活性化に繋がればと思います。

移住者DATA

ターン

Profile
山口 貴宏さん(42歳)
Data
鹿児島県出身。大学時代は岡山で過ごし、卒業後は広告の制作会社に就職。これまでに福岡、熊本、宮崎で生活してきた。2012年に、妻の地元であるうきは市で就農。妻と2人の子ども、義父、義母、義祖母と一緒に暮らしている。葡萄と柿をメインに栽培する一方で、醸造用の葡萄の栽培やデパートへの出店など新たな試みも実践。
Work
果樹農家

ほとんど未経験だった自分が、まさかの就農。周りに支えられ、なんとかひとり立ちできました。

Q. 移住のきっかけを教えてください。

広告の制作会社に営業として勤務していたのですが、帰宅時間が遅く、休みもほとんど取れませんでした。このままの生活ではいけないと思っていたところに、妻からお義父さんの体調がすぐれないため、家業の農業を1人で続けられなくなったという話をされました。なんとかしたい気持ちはありましたが、農作業は帰省した際に、少し手伝ったことがある程度。継いでみて、「やっぱりダメでした」と辞めるわけにはいきません。ちょうど会社では、昇進の話がありました。正直、かなり悩みましたが、将来のことを考えると会社で働き続けるのに不安が残ったこと、土起こしから収穫まで作業の全行程に携われる農業に面白さを感じていたこと、田舎での生活に魅力を感じていたという理由で、農業を継ぐ決意をしました。体力と根性だけは自信があったので、「やってやるぞ」という気持ちでした。

Q. ご両親の反応はいかがでしたか?

「庭の草むしりすらしたことのないあなたができるの?」とびっくりされました(笑)。「お義父さんが長く続けてきた実績があるので、それなりにはやっていけるかもしれない。でも、ずっと続けていくには相当の努力が必要だよ」と。確かに、専業農家が次々に減っていく中で、経験のない自分が利益を出し続けることは容易ではありません。最初はとても心配されましたが、継ぐと決めてからは応援してくれるようになりました。

Q. 就農するにあたって利用した支援制度はありますか?

国が新規就農者を対象に交付する「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」※を利用しました。「経営開始型」では、農業を始めてから経営が安定するまでの最長5年間、年間で最大150万円が支給されます。最低限の生活が保証されるこの期間に、いかに作業に慣れるかが重要。自分の場合、1〜2年目は技術の習得と向上、3年目は作業効率や課題への対策に取り組みました。4年目には葡萄畑を任されるようになって、スタッフに手伝ってもらいながら収穫作業ができるように。そして5年目には、一通りの作業を自分でできるようになりました。経験のない状態で農業を始めるのは、助走なしで遠くまで飛ぼうとするようなもの。この5年間は、とても貴重な助走期間になりました。

※「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」とは(外部サイト)
次世代を担う新規就農者を支援するための資金。就農前の研修を後押しする「準備型」(2年以内)と、就農直後の経営確立を支援する「経営開始型」(5年以内)がある。

Q.現在の仕事について教えてください。

4ヘクタールの畑で、お義父さんと分担しながら柿と葡萄を栽培しています。農業で売り上げを伸ばしていくには、たくさんの量を収穫し、それでいて高い品質を保つ必要があります。相反することだと思われがちですが、同じ地域には、実際に両立させている方がいらっしゃいます。その方のアドバイスを参考にしながら、自分の畑ではどのようなやり方ができるかを考察。収穫時に脚立を設置する場所や収穫物の選別方法など、効率アップのためにさまざまな試みを行っていきました。幸いなことに、お義父さんが古いやり方に固執しないため、思い切ってチャレンジすることができました。おかげで、冷蔵柿は高い収穫量を記録し、品質も農協から高い評価を受けることができました。

葡萄の剪定を行う山口さん。常に効率化を意識して作業に取り組んでいるという。

子どもを塾に預けっぱなしにせず、自分が勉強を教える。移住して、子どもと過ごす時間が格段に増えました。

Q. 移住して意外だったことを教えてください。

生活するうえで、車がないと厳しいことはわかっていました。しかし、軽トラが欠かせないということまでは予想していませんでした。自宅の庭で刈った草や落ち葉など、大量のゴミを処分する際には荷台のある車が必要です。また、一般的な乗用車が通れないような、険しい道が意外と多いんですよ。農家ではなくても、愛車が軽トラという方も珍しくありません。

Q. 移住してよかったなと思うことを教えてください。

子どもと過ごす時間が、明らかに増えたことです。これにより、子どものちょっとした異変に気付けるようになりました。もともと息子は、算数の計算が早いほうでした。しかし些細なことから、文章問題が苦手だということが分かったんです。それを機に、自分が勉強を教えるようになり、結果、少しずつ成績が上がっていきました。以前のような夜遅くまで働く生活だったら、塾に預けっぱなしになっていたはず。それを思うと、今の生活に変えて本当によかったです。

Q. 移住してお子さんに変化はありましたか?

息子はもともとインドアな性格でしたが、移住してからは「魚を採りに行きたい!」と外で遊ぶようになりました。最初は「この草は食べられるんだよ」「川でそんなことをすると滑るぞ、ほら滑った!」と、自分がいろいろと教えながら連れて回っていました。それが今では、逆に自分の方が魚の名前や生態を教えてもらっています(笑)。また、子どもたちを畑に連れて行き、作物に触れさせることもあります。特徴を説明してもまだピンときていないようですが、こうして自然に触れさせながら育てることは、大きくなった時に何かしらよい影響があると思うんですよね。このような経験は、都会に住んでいるとなかなかさせてあげられないことです。

近所を流れる川は、子どもが生き物の生態を学んだり自然と親しんだりする格好の場所。
家族で初詣に出かける「浮羽稲荷神社」。高台にあり、新緑や紅葉に染まった山々を望める。

Q. 日々の生活に変化はありましたか?

仕事関係の交流範囲が広がり、お酒を飲む機会が増えました。農業は情報が大切で、作業方法や販路に関するノウハウは、周りの農家の方がたくさんもっています。そういった方々と、実際に会って話ができるという経験はお金では買えません。移住したばかりの頃はたくさん飲みに誘ったし、誘われたら必ず顔を出すようにしていました。時には、後輩のお嫁さん探しに奔走したこともありました(笑)。おかげで3年も経つ頃には、地域のほとんどの農家の方と知り合いに。もちろん自分も、よい情報があれば共有しています。みなさんはライバルであると同時に、かけがえのない仲間でもあります。言ってみれば、産地が一つのチーム。協力しながら農業を盛り上げていきたいと思っています。

地域に溶け込むには、自分から飛び込む勇気が必要。オープンマインドで接すれば、受け入れてもらえるはず。

Q. 福岡の魅力を教えてください。

福岡県は、食べ物が美味しいし、利便性もよく暮らしやすい。コンパクトな街のなかに商業、工業、農業などが揃っていて、総合力は全国でもトップクラスだと思います。また、うきは市には移住して自分のお店を営むなど、チャレンジ精神をもった方がたくさんいます。そういう方々を受け入れる風土があるので、新しいことを始めるにはぴったりな街だと思います。

Q. これからこの街で、どんなことに取り組んでいきたいですか?

うちの畑では、繁忙期になると12〜13人のスタッフが働いています。繁忙期と閑散期の差が激しい果樹農家は、パート雇用にせざるを得ません。今後、いかにして社員雇用を生み出すかが大きな課題です。現在、葡萄と柿の閑散期に柑橘を植えたり、酒店と契約し醸造用の葡萄を栽培したりと、年間雇用を生み出す施策を行なっているところです。ほかにも、違う品目を栽培する農家と人材をシェアしたり、人材派遣方式で一定量の作業を大人数で担ったりと、さまざまなアプローチを考えています。うまくいけば、新たな雇用を生み出すビジネスモデルとして、地域や県全体に波及していくはずです。そうなることで移住・定住者が増え、街の活性化に繋がればと思います。

ただ、せっかく田舎にいるので、もう少しのんびり暮らしたいのが本音です(笑)。休日は家族水入らずで、キャンプなどのアウトドアを楽しみたいですね。自然を通して、多くの方にうきは市の魅力を知ってもらえる場所を作れたらいいですね。

Q. 移住を考えている方にメッセージをお願いします。

地域に溶け込むには、自分から飛び込んでいく勇気が必要です。「自分はこういう者です」とオープンマインドで接していけば、必ず受け入れてもらえるはずです。もしも農業を始めたいと思っていたら、パートをしながら誰かの畑を手伝うなど、方法はたくさんあります。移住者の場合、環境や資源といった地域の魅力を、客観的な目で捉えることができます。そうすることで、地元の人は思いつかないようなアイデアを生み出せるかもしれません。また、廃業する農家が多いということは、土地を引き継ぐ機会も多いということ。就農を考えている方にとって、これからの時代、ある意味チャンスかもしれません。家族と過ごす幸せな時間に、地域の方との温かな交流、美味しい空気に静かな環境。もしも収入が減ったとしても、それを補って余りあるメリットはたくさんあると思いますよ。

※当インタビューは、2019年12月18日に行われたものです。

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