移住者インタビュー

LIFE STYLE 飯塚市

筑豊に来て、生き物や自然の楽しさをみんなに広める夢が叶いました。移住者を気持ち良く迎え入れてくれる、筑豊の人たちの温かさに本当に感謝です。

移住者DATA

ターン

Profile
岸本 博和さん(47歳)
Data
塾講師の傍ら、筑豊の自然を楽しむ会(ちくぜんらく)を発足し、観察会やワークショップをとおして、鳥や虫などの生き物のかわいらしさや、森や樹木などの自然の素晴らしさを伝える活動を行っている。
Work
寺子屋ゑびす主宰,塾・予備校講師など

仕事で福岡に来ましたが、福岡の自然と食べ物に魅せられて、ずるずる、18年住み続けています。

Q.飯塚市に移住したきっかけは?

たまたま仕事の関係で福岡市内に住むことになりました。その仕事は2、3年で辞めたんですが、辞めてからも食べ物がおいしいとかの理由で、「まぁ、しばらく住もうかなぁ」となりました。福岡市内でも食いもんはうまいし、友達は出来るしで、ずるずると住み続けて7、8年になってしまいました。

ですが、その頃から周りが開発されて来て、「(私は山登りが好きなもんですから)開発されちゃったね。(私らにとっては)もうちょっと田舎の方がいいね」って、妻に相談したところ、妻もそう思っていたので、新しい移住先をネットで探すようになりました。

今、住んでる家は、実はネットで見つけた家なんです。ほぼ、縁もゆかりもなかった筑豊(福岡県の4地域の一つ。飯塚市はこの筑豊に含まれる。)なんですが、まずネットで見て、「これはいい家(場所)やね」と第一印象で思いました。それで実際行ってみたら、「ここは周りが田んぼばっかりで、住み心地良さそう」と、さらに気に入りました。なので移住先をここ(筑豊)に決めたんですが、現実に住んでみたところ、住めば住むほど思わぬ良さが出てくるんです。味があるって言うんですかね。その「味」に魅せられて、ここ(筑豊)に住み着いてからもう、8年ぐらい経ってしまいました。1日1日が楽しくて、それが今までずっと続いている感じですね。

サンビレッジ茜にて
筑豊の友にもらった愛車と岸本さん

福岡の魚や野菜がおいしいのは分かりますが、飯塚のケーキがおいしいのには驚きました。

Q. 福岡は食べ物がおいしいということですが、例えば何がおいしいですか?

だいたい何でもおいしいです。私以前は関西におったんですが、関西って結構、食文化が豊かという印象を持っていました。多分、関西から一歩も出らんかったら気付かなかったと思うんですよ。関西の食で満足してた。ところが福岡に来ると、まず、お魚がおいしい。そして米もうまい。福岡は安くてうまいものが普通に手に入るなと思いましたね。そのうえ、内陸の筑豊はさらに、水と米と野菜がうまいです。

でも一方で、内陸だから魚はあきらめていたんですよ。あんまり美味しくなかろうねと。でも面白いことにですね。内陸なんですけどおいしいんですよ。これが。これは自論ですが、筑豊には昔、炭鉱があったからじゃないかと思っているんです。炭鉱で潤っていたから皆いいものばかりを食べていて、舌が肥えとったんじゃないかと。舌が肥えとるので店側もあんまり変なものは出せん。そこで昔開拓した独自の仕入れルートが、現在でも続いているんやないかと考えています。

いのしし丼を食べる岸本さん(有門亭にて)

あと、意外なところで、筑豊はケーキもうまいんですよ。私、西宮で20年近く育っとるんですが、神戸の文化圏ですからケーキがおいしいんですよ。かなりうまいです。たくさんお店があるから、いろいろ選べる環境にあったんです。しかも、今、有名なケーキ屋やパン屋がもうちょっと小さいお店だった頃から、それらのお店で食い付けているもんですから、ケーキとパンについてはうるさいんですよ。私、こう見えて。全然、見えませんけどね(笑)。そんな背景があるもんですから、福岡に来た時は、やっぱりケーキは神戸に負けてるなと思いました。他の食いもんはうまい。でもケーキはまだまだやなぁと。あと、中華街が無いのも不満だった。

筑豊のお菓子たち

ところが、筑豊に来まして、「筑豊のケーキもたいしたことなかろう」と、たかをくくって食ったら、「あれ?これなかなかイケるんじゃないの?そして、この値段でしょ。この値段でこの味出すって、これなかなか無いんじゃない?」って予想外の美味しさに驚いた。なんで、いろんなケーキ屋巡ったんですよ。そうすると、やっぱりお店によって得手不得手があって、焼き菓子はここがおいしいけど、ババロア系はこっちがおいしいねとか。当然、そういうのがあるんですね。でも、何しろ選べる。選べる上に安い。「これはもしかして、神戸ヤバいんじゃないの?」筑豊に住んで、今、8年になりますが、4、5年目ぐらいの時に思いましたね。「あ、もう神戸に戻る必要が無くなっちゃった」と。「もう、ケーキ食いに神戸に行く必要も無いな」と。「こっちのケーキで十分だ」と。この筑豊のケーキのレベルの高さはおそらく、こんな理由があるんじゃないかと思うんです。つまり、筑豊がシュガーロードの宿場町の一つだったこともあり、元々、菓子文化が花開いていたところに、炭鉱が出来て人が集まり景気も良くなったので、重労働に従事する炭坑夫に砂糖菓子がグッと売れるようになった。そして、その時代に繁盛したお饅頭(まんじゅう)屋さんとかがたくさん残っていて、そのお饅頭屋さんのご子息、いわゆる2代目、3代目がケーキに手を出した。昔やったらいい加減なもん作ってたんでしょうけど、今は、嶋田学園飯塚高等学校の製菓コースとか嘉穂総合高等学校の生活情報科とかで学んだり、または独自でお菓子留学していたり、あるいはどっかのケーキ屋で修行していたりして、菓子作りの勉強をちゃんとやりよるようなんですよ。だから、「筑豊のケーキは侮れねぇな」と思うようになりましたね。

以前住んでいた京都で叶わなかった夢を、筑豊に来て実現することができました。

Q. 福岡に来て変わったことを教えてください。

「毎年、これぐらい稼がないといけない」という発想がほぼ無くなりました。お金も確かに大事やけれども、お金を稼ぐのに掛ける時間と、いろんな人と関わったり、自然の中で遊んだりする時間とを比べたときに、やっぱり、人との関わりや自然の中での遊びに時間を掛けたいんですよね。それを実行するようになってからは、「ま、お金は必要最小限でいいかな」と思えるようになりましたね。

Q. 福岡に来て良かったことを教えてください。

京都に住んでいた時に想い描いていた夢が実現できつつあることですね。私、京都にも11年ぐらい住んどったことがあるんですけど、京都でいろいろやりたいことがあったんですよ。山をこうしたいとか。木を切ってこうしたいとか。里山を復活させたいとか。でも、他人の山とか森ですから、そうそう自由にできません。

ところが筑豊に来ると、「私、自然観察会をやってます。で、里山も実(じつ)は作らないといけないんですよねぇ」って、地元の方に話をすると、「あぁ。じゃあ、うちの山を使ったらいい」とか、「使ってない田んぼがあるから、自由に使っていいよ」と言ってくださる。「じゃあ、湿地に再生したいと思いますけど」と返すと、「あぁ、どうぞどうぞ」と普通に田んぼを貸してくれます。それも、「どうぞ、使ってください」みたいな感じで。これは本当に筑豊に来て良かったことですよ。

棚田
田んぼとあぜ道
どんぐりを食べるワークショップ

Q. 自然観察会などをなさってるそうですが、具体的な活動内容を教えてください。

そうですね。親子相手の自然観察会と、どんぐりなんかの自然から得られる物を使ったワークショップとかを組み合わせて、「筑豊って、実は自然が楽しいんだよ」ということを伝える活動をしています。例えば、多分、他の地域にも自然が楽しいところはいっぱいあるんだろうけど、意外に、わざわざ阿蘇や山口なんかまで行かなくても、車ですぐのところにある三郡山(さんぐんさん)(福岡県を東西に2分する三郡山地の中央に位置する最高峰の山)も楽しいよとか。あるいは、歩いてすぐのところに遠賀川(おんががわ)(福岡県の筑豊地区から北九州市・中間市・遠賀郡を流れる一級河川)っていう川があるんですけど、その河川敷を歩くと楽しいんですよとか。

サンビレッジ茜にて

それで、そこから派生して里山の生き物を増やす活動もしています。昔はもっと里山が多くあって生き物もたくさん住んでいたはずなんだけど、今は少なくなっている。なので、木はドンドン伐りましょうと。普通、木を伐る言うたら自然破壊みたいに思われるんですけど、適度に切って明るい森を作る方が、おそらく、生物は多様になります。それを実証できれば、そこで虫取りもできるし、草とか木の実の採集もできるようになる。そうすると、ますます遊びの範囲が広がるんですね。

以上のような人間関係の輪作りと、「ここではこんな遊びができる」という知恵の伝承を行って、私らが爺さんになる頃には、その子どもたちが(多分、一番中心的な20代、30代、40代になっている頃でしょう)、次の世代に広げていってくれる。その循環の土台を作っています。

よそ者を温かく迎え入れてくれる筑豊の人たちには感謝しています。いろんな人を紹介してくれるので、どんどん人の輪が広がっています。

地元のナチュラルカフェ「宮ノ上げんき」の店長さんと

Q. 福岡の魅力は何ですか?

食べ物がおいしいことと、人が面白いことですね。福岡に移住して来て笑うことが増えましたね。笑顔が増えた。そしてさらに、筑豊に移ってからは、日々、町のどっかで笑い声が聞こえています。その笑いの輪の中に自分も混ざっていって、どんどんどんどん笑いが増えていくんです。それが一番の魅力ですね。

でも、ここで疑問に思うのが、なぜ、筑豊の人たちは、よそ者の私をこんなに笑顔で迎え入れてくれるのかということ。それは多分、こんな背景があるからじゃないかと思うんです。

筑豊は長崎街道の街道筋で、元々、いろんな人が行き交っていたんですが、そこに炭鉱が発展して、よそ者がダーッと入って来たわけですよ。つまり、よそ者に対して免疫が出来ている状態だったと思うんです(ただ、炭鉱で発展した当時の大きい都会のまんまだったら、多分、私らは移住先に筑豊を選択しなかったと思いますが)。しかし、まぁ、筑豊の人にとって良かったのか悪かったのか分からないですけど、石炭は掘らなくなりまして。多分、景気とかもグーッと落ちたと思うんですよ。そんな苦い経験をしているから、今でも筑豊に残っている人っていうのは、痛みが分かる人が多いと思うんですね。痛みが分かる人が多いんで優しい人が多いです。優しい人が多い上によそ者に対して免疫が出来てるもんだから、私らがパッと住み着いたら、もの凄く優しくいろんなこと教えてくれます。「こんな店あるぞ」「こんなもん知ってるか?」とか。例えば私らが、「こういう、お饅頭ありますよね」って言うと、「あぁ、ま、そらある。でも、それよりもっとうまい饅頭屋があるぞ」と教えてくれるんですよ。飯塚やったら、『ふたせ饅頭』というのを紹介してくれる。で、「ふたせ饅頭おいしいですよね」って、私も今度また別な人に言うんですよ。「ふたせ饅頭知ってるぞ!」ってことをアピールしようと思って。そしたら返って来る返事が、「あぁ、ふたせ饅頭は確かにうまい。でも、山田饅頭知らんやろ?」と、また別の饅頭屋を教えてくれるんです。こんなふうに、次々といろんなことを、いろんな人が教えてくれます。出し惜しみなんてしない。

炭鉱の町、飯塚市忠隈のボタ山(1958年)(※1)「写真提供:飯塚市」
飯塚市忠隈のボタ山(現在)(※2)
「写真提供:飯塚市」

おまけに、このやり取りは、別に饅頭とか食べ物だけの話ではなくて、人でも同じです。「この人知ってるか?」って聞かれるので、知らないと答えると、「あぁ、知らない?じゃあ、つないであげるわ」と返事が返ってくる。あるいは、「虫取りをしてるとか。自然観察会をやってる」とか言ったら、「こういう自然関係の人がおるよ。こんなことやってる人がおるよ。こっちにこんな人がおるよ。じゃ、今度紹介してあげる」と、自分がつながりたい人を紹介してくれる。それはリップサービスでも何でもなくて、普通に紹介してくれます。というより、競って紹介してくれるくらいです。なので、活動範囲もどんどん広がりますね。

そんな筑豊の人たちの優しさが大好きなんです。

(※1)ボタ山とは、石炭と一緒に掘り出された石や岩を積み上げた山のこと。ボタはトロッコで頂上まで運ばれ捨てられる。したがって、石炭を掘れば掘るほどボタが出てボタ山も大きくなる。(1)

(※2)ボタ山の現在の様子。木々が生い茂り、昆虫などの生物も生息している。(2)

Q. 福岡に移住を考えている皆さんにメッセージをお願いします。

そうですね。福岡にせよ筑豊にせよ、結構、いろんなことを語られるんです。かなりネガティブなことも言われます。けれども実際に住んでみると面白いです。長く住めば住むほど、どんどん面白くなります。これはもう確実ですね。

そして、食べ物もそうですが、実は、福岡(あるいは筑豊)は、特に人が楽しいです。いろんな人といろんな形で付き合っていく。それも昔ながらの飲酒とかじゃなくて、いろいろやりたいことをやっている人達がいて、自然とそこに皆集まる。あるいは、自分が、「これをやりたいです!」って、声を上げると、勝手に人が集まって来るんですよ。そういうのを活用すれば、面白いんじゃないかなぁと思いますね。

※当インタビューは、2014年11月28日に行われたものです。

参考文献

(1)(2) 飯塚市歴史資料館, わがまちの文化財「ボタ山」, 飯塚市公式サイト, 2013/02/04,
広報いいづか 2012.5 No.74(提供:飯塚市), (参照2015/01/23)

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